前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記14』

第五章 湖の秘密と後片付けはキチンとね。

     (3)

「ゆおーーっし! いよいよクライマックスば来たようっちゃねぇ✌」

 

 なにを根拠にしているのはか不明だが、荒生田がひとりで盛り上がっていた。

 

 その右横から、日明が水を差した。

 

「しかぁーーし荒生田クン、どうやらティラノダコラは、街の方向に向かってるようだがにぃ☛ これはどえりゃあことになるだがねぇ☻」

 

 ふたりはいまだ、周辺の状況を手に取るように見渡せる、小高い丘の上にいた。

 

 相変わらずおのれの安全のみを優先している、とてもズルいふたりであった。

 

「それよりええころかげんに、次の段階に入ったほうがおうじょうこかんでええがやぁ☻ 事がこれ以上、大きゅうならんうちにがんねぇ⚠⛔

 

 しかし今の日明のセリフには、荒生田は初めて、ある種の不審を感じ取った。

 

「事が大きゅうならんうちぃ? なんね、それ?」

 

 これに日明は、不敵に微笑んで返すだけ。中年親父の不敵な笑みなど、ただ単に気色が悪いだけなのだが。

 

「まあ、ええがや☻ これはチミには言うておくがんねぇ✌」

 

 日明が荒生田の右耳に、そっと耳打ちをした。

 

「オレは可愛い女ん子から耳打ちされたいっちゃけどねぇ☹」

 

 などと文句をたらたらほざきつつ、荒生田は日明のひそひそ話に耳を傾けた。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system