『剣遊記14』 第五章 湖の秘密と後片付けはキチンとね。 (25) 「うわっち!」
孝治も見た。池田湖の真ん中辺りの水面から、突如噴水のように水が宙へと噴き上がり、空中高くしぶきを吹き上げている光景を。
『この異常事態、もうおなじみっちゃねぇ☚☻』
涼子がもはや、当たり前の風景のように言ってくれた。
『またティラノダコラが出てくるとやろっか?』
まさに幽霊少女の言うとおり、水面を割って、あのティラノサウルス型の頭が、再び湖上に浮かび上がった。
しかもタコの触手型である両腕に、湖で溺れた荒生田と日明『たち』を、たくさんかかえていた。
「ひいふうみい……とぉ……✍」
二島が大真面目に、その人数を右手人差し指で差しながら数えていた。
「荒生田はんが三人……日明はんも三人……これはいったいどないなってまんのや?」
「うわっち!」
孝治は自分の耳も瞳も疑った。
「なして先輩と日明さんが三人ずつになっとうっちゃ!?」
なんとティラノダコラの両腕触手には、まさに合計六人の荒生田と日明が存在しているのだ。しかもふつうの荒生田と日明もいるのだが、残りのふたりずつはなぜか、金と銀一色に染まった姿となっていた。
それからまたなんと、ティラノダコラが孝治たちに向けて、今度は人間の声を発したのである。
『おはんらがいらんこつ落とされたんは、この金の戦士はんと博士はんと、銀の戦士はんと博士はんと、ふつうの戦士はんと博士はんの、どれでごわんど?』
昔風の鹿児島弁は相変わらずだが、声音は今度は、見事な女性風。孝治はすぐにピン💡ときた。
「この声……さっきの幽霊カップルの、女ん人んほうっちゃね✍ 今になって初めて聞いたっちゃけど……いんや、海ん中もこん声やったばい✊ それがまたティラノダコラの頭ば操って、上手に操作しよんばい✊✋ こりゃ早速、湖の精霊になりきったっちゅうわけっちゃね☀」
さらに二島も付け加えた。
「この話……西洋の昔話にありましたなぁ✍ なんでも木こりはんが池に斧を落としたとき、池の女神はんが出はってふつうの斧と金と銀の斧を見せはって、どれがあんさんのや、と尋ねた話でんがな☕ まあ、人は正直が一番や言う、なんや教訓じみたお話でんな☺」
孝治も納得。
「それば気取っとうわけっちゃね☻ そげんやったら、もう答えは決まっとうっちゃよ☠」
「では、みんなで一斉に♐」
なぜか友美が音頭を取って、孝治と涼子も声をそろえて叫んだ。
「金と銀の先輩と日明さん!」
「金と銀の先輩と日明さん!」
『金と銀の先輩と変なおじさん!』
ちなみに孝治、友美、涼子の順番。二島は辞退したようだ。
それはとにかく、そのとたん、ティラノダコラから発せられる声音の口調が変わった。
『おはんらはみんな、ばかいき(鹿児島弁で『力いっぱい』)あばてんねうそひいごろ(鹿児島弁で『嘘吐き』)だからぁ☠ ほんのこておはんらに返すモンはありもうさん!』
つまりティラノダコラの姿を借りている池田湖の精とやらは、孝治たちを嘘吐きと決めつけたようで、そのままズブズブと、大怪獣の姿が湖面から水中へと潜っていく。
荒生田と日明を道連れにして。
「くぉらぁーーっ! 孝治ぃーーっ! オレば含めて金と銀のオレも助けんかぁーーい!」
「は、離すぎゃあ! うわたくしの偉大なるIQ870の頭脳を、こんなだだくそ扱いしてええがやかぁーーっ!」
湖面では必死の形相で、荒生田と日明が溺れていた。それを裕志が半狂乱の感じになって、湖岸からあたふたしながら眺めているだけ。
「先ぱぁーーい! ぼくは恐くてそこまで行けましぇんけぇ、なんとか自力で頑張ってくだしゃあーーい!」
また徹哉は徹夜で、やはりポーカーフェイス😑のままつぶやくのみ。
「博士、ソノてぃらのだこらハ博士ニ再会デキタコトガ、トテモウレシイト思ッテルトボクハ考察スルンダナ。コレカラモミンナ仲良シデ暮ラシテイケタライイト考察サレルンダナ」
でもって、事実上先輩を見殺し(?)にした孝治も、お終いにひと言。
「これでほんなこつ終わりみたいっちゃね☻ そやけどこのオチって、どっか別の某有名作品で見たような気がするっちゃねぇ✍」
これに二島が、結末の締めを言ってくれた。
「それは言わずが華{はな}、と言うもんでっせ、孝治はん✌☻」
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