『剣遊記14』 第五章 湖の秘密と後片付けはキチンとね。 (24) 「わわぁーーっ! 先輩が水に落ちたぁーーっ!」
「アレ、博士ガ水ニ落チタンダナ」
それぞれの後輩と助手である裕志と徹哉が、実に個性(?)に満ちた表現法で慌てふためいた。
「わっぷっ! わっぷっ! 早よ助けんけぇーーっ!」
「はよう、うわたくしに救いの手をーーっ!」
荒生田がカナヅチなのは、孝治を始め未来亭の面々であれば、誰もが知っていた。しかし日明までが同類であったとは、たった今初めて知った話である。もちろん二島だけは、ふたりとも(荒生田と日明)カナヅチだとは知らなかったに違いない。そんな二島が、本当に慌てとるんけ? ――と言ってやりたいような感じで、孝治にヒョイと顔を向けた。
「こりゃまたエラいことになりましたなぁ⚠ これからどないするつもりでっか?」
「そりゃ……早よ助けにゃいかんでしょうけどぉ……☁」
いつもどおり、孝治は先輩の救助をためらった。
ここで助けることは簡単。だけど命の恩人でもこれっぽっちも恩義を感じない荒生田を助けたあとで、いったいどのような逆襲をされる展開となるか。それだけが唯一、孝治の足踏み状態の理由であった。
「孝治っ! あれば見てん!☞」
そんな逡巡している孝治の右横で、友美が湖の真ん中辺りを右手で指差した。
「また池田湖からなんか出ようっちゃよ☛」 (C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |