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『剣遊記14』

第五章 湖の秘密と後片付けはキチンとね。

     (22)

 そんな変態騒ぎには目もくれず、日明はどうやら、頭痛の最中であるらしい。頭を左右にブンブンと振りまくりながら(よけい痛くなるぞ)、助手の徹哉に尋ねていた。

 

「どうやらうわたくしがあすんどる間に、うわたくしの最高傑作であるティラノダコラくんは、いっつかどっかに行ってしまったようがんねぇ✈ 徹哉クンは、なんか見てなかったぎゃあ?」

 

 日明は失神中の間の出来事を、やはりなにも知らない様子でいた。これはむしろ不幸中の幸いと言っても良い話であるが、徹哉が博士に、正直な態度で答えていた。

 

 思いっきりにしつこいが、首が外れたまんまで。ついでに申せば、これがまったく要領を得ない感じの返答であった。

 

「ハイ、ボクモ一応監視シテタンデスケド、ボクノ感知しすてむガナニモ起動シナイママ、てぃらのだこらクンガ池田湖ニ潜ッテ行カレタンダナ。ホントニコノ世ノ中、経験トカでーたノ通ジナイ話モアルモンナンダナ」

 

「う〜ん、こそばゆいほど話がわからんがね

 

「うわっち?」

 

 このとき日明の頭からは心なしか硝煙が上がり、火花がパチパチと弾けているように、端で見ている孝治には感じられた(荒生田撃退済み)。

 

 あくまでも錯覚のようではあるが。そこへ徹哉が、あまり心配していないようなポーカーフェイス😑で、日明に話しかけた。

 

「博士、ゴ気分ノホウハ正常ニ機能シテイルノカナ」

 

 両手で持っている自分の頭を、日明の前に差し出すような体勢で。無論見た目にもわかる空元気で、日明が徹哉に応じ返した。

 

 バチンと右手で、徹哉の頭の後頭部を、思いっきりにはたきながらであるが。

 

「ぬわーにを言うとるぎゃあ、徹哉クンとやらぁ、うわたくしはぎょうさんあんばようやりようがねぇ☀ おうじょうこくことは要らんぎゃあ☆」

 

 すると後頭部をはたかれた徹哉の頭が彼の両手からこぼれ落ち、ポロッと地面に転がったりする。

 

「うわっち! ゴツンち凄い音がしたっちゃあ!」

 

「きゃあーーっ! 大丈夫けぇ?」

 

 孝治も友美もヒヤッと肝の冷える思いがしたけど、当の徹哉は、もう慣れたものでいた。すぐに自分で自分の頭を拾い上げ、それを左手でかかえた格好になって、右手でパタパタと土汚れを掃い始めた。

 

「大丈夫ナンダナ。少シ接合部ガユルンダミタイナンデ、工場ニ帰ッタトキニ、キチント整備シナイトイケナインダナ」

 

 ついでに頭が外れた首の部分からは、今度こそ錯覚ではなしの、本物の硝煙と火花がバチバチと噴出していた。


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