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『剣遊記14』

第五章 湖の秘密と後片付けはキチンとね。

     (21)

 実は今の今まで、荒生田と日明はティラノダコラの触手によって、雁字搦めのグルグル巻きにされていたわけ。

 

 この間ずっと静かにしていた理由は、なんということでもなし。触手の馬鹿強い力でギュウギュウに締め付けられ、要するに気を失っていただけなのだ。

 

「ふわぁ〜〜あ〜〜、よう寝とったがんねぇ

 

 当然荒生田の背後には、日明博士の姿もあった。

 

「うわっち☠ やっぱ出てきたっちゃねぇ☢」

 

 孝治は思わず舌打ちをした。

 

「このふたりもあんまんまティラノダコラといっしょに、池田湖の底に沈んでしもうたらよかったとにねぇ☃」

 

 舌打ちの続きであるつぶやきも当然ながら、荒生田の地獄耳の前では筒抜けだった。

 

「孝治ぃ〜〜、おめえの言いたかこつ、オレにはようわかるっちゃけね☻」

 

「うわっち!」

 

 孝治は心底から戦慄したが、このあと意外にも、荒生田はなぜか穏便なる態度に出てきた。

 

「まあ、よかっちゃ☻ 今回はなんもかも水に流してやるっちゃけ✌」

 

「うわっち? なしてですけ?」

 

 今まで経験した覚えのない荒生田の寛容ぶり。孝治は大いなる疑問を感じた。しかし荒生田がすぐに、その答えを返してくれた。

 

「それはこれったぁーーい♡」

 

「うわっちぃーーっ!」

 

 再登場の時点である程度予測していたとは言え、荒生田が突如、孝治のトップレス状態に飛びかかってきた。

 

「うわっち! うわっち! 離せっ! 離しんしゃい! こん変態先輩がぁーーっ!」

 

 いくら両手でボコボコと頭を叩いても、孝治の胴体にしっかりとしがみ付いたサングラスの変態は、ガッチリと喰い付いたまま。一ミリたりとも孝治の体から離れようとはしなかった。


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