前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記14』

第五章 湖の秘密と後片付けはキチンとね。

     (17)

 それからまさに、裕志が辞世の句を述べたとおりの展開。孝治たちの目の前の空間には、青白い炎のような幻影が浮かび上がっていた。それはすでに見慣れている涼子変形の発光球と、まったく同じ種類の光であった。

 

「や、やっぱし……幽霊の登場なんけ♋」

 

 日頃から涼子で慣れているとは言え、やはり新人幽霊(?)の出現に、孝治は大きな緊張を禁じ得なかった。

 

「ま、毎度の恒例っちゅうたかて、やっぱビビるもんばいねぇ♋」

 

『それって、あたしに対する当てつけね♨』

 

 当の涼子が立腹したようだが、今はそれに構ってはいられない。しかし、先ほど耳に入った口調から察して、今から現われる幽霊には、むしろ平和的な姿勢も垣間見られる感じが、孝治にはしていた。

 

「と、とにかく……幽霊はんの話を聞こうやおまへんか♠♐」

 

 涼子の声は聞こえないが、目の前の新しい怪現象は見えているらしい二島が、少し緊張している様子で、一歩前へと進み出た。

 

 ここはやはり、大人の貫禄であろうか。孝治よりは、度胸が遥かに強靭となっているようだ。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2016 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system