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『剣遊記14』

第五章 湖の秘密と後片付けはキチンとね。

     (10)

「先輩っ! それっちどげんこと!?」

 

 孝治は速攻で、荒生田に続けざまでの質問を浴びせかけた。変態戦士を前にして自分の胸を隠し忘れているなど、あとで気がついた話である。

 

「それはやねぇ……

 

「まあまあ、待つがや☻」

 

 しかし荒生田が答えるよりも先に、なぜか日明が率先して、孝治の問いに応じてくれた。実際荒生田など、ニヤニヤしているばかりでちっとも要領を得ないことだし(三白眼が孝治の胸に集中しているから)。

 

「諸君! どえれぁあごたいげさまさせて、真にごぶれいしましたがねぇ☻」

 

「うわっち?」

 

 とにかく孝治を始め、日明の奇声で目がさらに点となる一同であった。それに構わず、日明は続けた。

 

「諸君、おうじょうこくことはにゃあぎゃあ このティラノダコラくんは、もううわたくしの言うこと、かわす(名古屋弁で『しっかりと』)聞いてくれるだぎゃあも そんなにおそがいせん(名古屋弁で『怖がらない』)でええがねぇ

 

「言いようこつが、ますますさっぱりわからんちゃけ

 

「うん、右に同じっちゃ♐」

 

 孝治と裕志は、やはり目が点。しかし二島は、なにか納得した感じでいた。

 

「つまりぃ……でんなぁ、このティラノダコラはんは、日明はんの、どういう縁か知らへんのですが、やはり古くからのお知り合いのようなもんでっか? このモンスターはんの態度を見たら、そない風にしか見えへんのですが

 

「そうそう、そうなんだぎゃあ☆」

 

 やはり理解がむずかしい状況なのだが、日明が我が意を得たとばかり、声のオクターブを張り上げた。

 

「諸君! 改めてご紹介するがやぁ! ここにおいでるティラノダコラくんこそ、このうわたくしの最高の大科学の大傑作☆ 未来の輝ける希望の産物☆☆ うわたくしの最高殊勲賞の遺伝子工学バイオテクノロジーが産み出した新種の生物クンなんだかねぇ☀☀☀

 

 ついでにその左横で、徹哉がボソッとつぶやいていた。けっこう長いセリフを。

 

「博士ガ古代ノ琥珀{コハク}ニ閉ジ込メラレテイタ蚊ノ化石カラ採取シタ恐竜ノ血液ノDNAト、海ノおくとぱすノ細胞ヲ合成サセテ造ッタ玩具……ジャナイ、最高傑作ナンダナ。23世紀デハチョット飼育ガ危ナイノデコノ世界マデ持ッテ来タンダケド、チョット最近、コノ世界ニ遊ビニ来タトキニ行方不明ニナッテタモンダカラ、未来亭ノ黒崎店長ノ協力モ借リテ、マタコノ世界マデ捜シニ来タンダナ。ソレデヤット、ナクシテタ物ガ見ツカッタンダナ」


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