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『剣遊記15』

第一章  目覚めれば太平洋ひとりぼっち。

     (6)

「なんですなぁ、こないなとき、簡単に解決しはる方法がおますさかい、そない慌てへんでもよろしゅうおまっせ♪✌」

 

「うわっち?」

 

 美奈子の挑発そのもの的姿をうしろから見ている孝治は、頭の上に何個もの『?』マークを浮かべるしかなかった。

 

「か、簡単……っちゅうてもやねぇ、この船長も船員もおらん船ん中で、おれたちになんができるっちゅうとや?」

 

 孝治の心配と不安は、もろ当然の成り行き。もう何度も何度も描写(かなり説明不足な面もあるけど)をしているのだが、この帆船はまさに現在、孝治たちだけの完全貸し切りなのである。そのようなある意味超贅沢な中、言わば操船の素人である自分たちに、いったいこの危機を回避する手段が存在するのだろうか。

 

「できまっせ

 

 困惑しまくりを自分で自覚している孝治を前にして、美奈子はやはり、余裕しゃくしゃくの態度を見せつけてくれた。この傾向は、彼女の弟子たちも同様だった。

 

「ネーちゃん、そない浮き足立たんかて、師匠に万事任せといたらええんやで

 

 まずは双子の姉のほうである千秋が、毎度ながらに生意気千万な口調で言ってくれた。

 

「そうなんですうぅぅぅ☀ 美奈子ちゃん、海でも大天才さんなんですうぅぅぅ☆♡」

 

 続いて妹のほうである千夏。根拠はまるで不明だった。

 

「天才やのうて天災やろうも☠」

 

 孝治のつまらないツッコミは無視された。このときどうやら、改めて三番目の弟子(?)になっているらしい秋恵が、孝治のように不安そうな感じで、うしろの友美に話しかけていた。

 

「あたしもしばらく、美奈子師匠にちょっとばかりお伴ばさせてもろうたとばってん、実は今かて、師匠に正体不明なとこがあるとよねぇ……☠」

 

「そん気持ち、ようわかるっちゃねぇ☢ あん人の正体と頭の中っち……☢」

 

 友美もコクリと、秋恵に合わせてうなずいた。


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