『剣遊記15』 第一章 目覚めれば太平洋ひとりぼっち。 (4) ほとんど裸に近い姿の美奈子は、特に居直る風でもなし。むしろ『ケロッ』から『きょとん』に表情を変化させていた。
少々の時間を取って繰り返しの説明を行なえば、プロポーションがかなり良い美奈子の全身は、現在黒い紐とわずかの布地で覆っているだけ。もともと超豊満気味でもある彼女の胸(おっぱい)が、これにて今にもはち切れんばかりの有様にもなっていた。
「友美ぃ! これでよかとやぁ!? 水着の専門家として、なんか言うたほうがええんとちゃうね!?♋」
美奈子では話が通じないので、孝治は続けて、自分のパートナーである魔術師――浅生友美{あそう ともみ}に顔を向け直した。幸いと言っては妙なのだが、友美は孝治と同じような、ごくふつうのビキニスタイル。色は青一色で統一していた。
「わたしに『これでよかとやぁ!?』……っち言われてもやねぇ☹」
いきなり話を振り向けられた友美としても、やはり思いっきり的に困惑気味だった。
「う〜ん、確かに孝治に今の水着ば勧めたんはわたしなんやけどぉ……美奈子さんのことばわたしに言われたかて困るっちゃねぇ☁ それからわたし、いつから水着の専門家になったとね?」
『でも、孝治も友美ちゃん推薦のビキニば、よう似合{にお}うとうっちゃねぇ☻ これはあたしも真似してみたかぁ〜〜ってとこばいねぇ☺☻』
「うわっち!」
ついでに孝治をからかってくれた者は、いつもどおりで幽霊娘の曽根涼子{そね りょうこ}。ちなみに彼女の存在を認知している者は、この場では孝治と友美のふたりだけ(どこの場に行っても、このふたりだけなのだが)。このことは他のメンバーには内緒にしているので、孝治も友美も大きく口に出さず、あえて黙っておいた。
さらに『ついで』で言えば――もう紹介疲れしているのだが、涼子はいつも、完全真っ裸の格好。つまり先ほど記した、ひとりの例外。これは涼子に言わせれば、姿が見えない幽霊の特権であるらしい。
「そんでネーちゃん、岩んこと忘れとんのやないか?」
「そうですうぅぅぅ☺ 孝治ちゃん、お船さんとぉお岩さんがぁゴッツンコするって言いたかったんじゃないかとぉ、千夏ちゃんは思いますですうぅぅぅ☞」
「うわっち! そうやった☆」
魔術師美奈子の弟子である双子の姉妹――高塔千秋{たかとう ちあき}と千夏{ちなつ}からそろって突っ込まれ、孝治はようやくにして、元の本題を取り戻した。ここで話の筋にあまり関係のない説明をしておくが、千秋と千夏は本当の双子なので、うりふたつの顔であっても、まったく不自然ではなし。ところが友美と涼子のほうも、やはりうりふたつの顔をした、まさにそっくりさん同士なのである。ただしこちらは、血の繋がった実の姉妹ではなく、まったく赤の他人の空似さん。ただ片方(涼子)が幽霊なので、この事実を知っている者は当の友美と涼子と――それから孝治だけとなっている。
とにかくこの件には絶対に触れないようにして、孝治は初めっから言いたかった叫びを繰り返した。
「そ、そうっちゃ! お、おれが言いたかったことは、こん船がこんまんまやったら、目の前の大岩と正面衝突するっちゃよ!」
「まっ! それは大変ばい!」
ここまで話が進んでようやく声を出した者は、ピンク一色のワンピース型水着を着用している大谷秋恵{おおたに あきえ}。なんの流行かはわからないが、この場にいる女の子のほとんどは、孝治を除いて、単色系の水着を愛用しているようである。
おまけで少し遅いが、千秋と千夏の水着にも触れておこう。この双子姉妹はやはりそろいで、紺色のスクール水着を着用していた。しかし言ってはいけない禁じ手として、ふたりともモロに、幼児体形丸出しな点があったりする(胸も無い☠)。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |