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『剣遊記閑話休題編T』

第三章 真夏の嵐の夜の夢。

     (5)

「ちょっと……してくるっちゃ……☢」

 

 全員で料理の真っ最中。登志子がポツリとつぶやいたとき、土砂降りはすでに小康の状態となっていた。

 

 それでももう、夜は遅かった。

 

 孤立している島は、すっかり完全の闇で覆われていた。

 

「やっぱ……トイレは怖いっちゃねぇ〜〜☠」

 

 炊事場と広間にはロウソクの火が置かれているのだが、火災予防のため、廊下には火が灯されていなかった。だから膝をガクガクと震わせながらも、登志子はなんとか用を終わらせた。それからすぐに、みんなの元へ戻ろうと、けっこう長い渡り廊下を、彼女は急ぎ足で駆け抜けようとした。そのとき通路の右側にある松林のほうから、ゴソッとなにやら、怪しい物音がした。

 

「嫌やなぁ〜〜☠ なんかおるとぉ〜〜☠」

 

 そこで足を停めたことが、登志子の命取りとなった。いきなり茂みの中からガバァッと、黒い影が飛び出したのだ。

 

それから一瞬にして、影が登志子をうしろから羽交い絞めにした。


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