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『剣遊記U』

第三章 幻のお宝を求めて。

     (4)

 秀正を叩きのめしたあと、今度は孝治のほうから尋ねてみた。

 

「まあ、よかっちゃよ♥ それよかおれが変身したこつ、誰からも聞いとらんかったとや? 正男{まさお}のおしゃべり狼🐺野郎が、散々バラしまくったっち思うとったとやけどねぇ……特に荒生田先輩なんか、どっから情報仕入れたんかは知らんとやけど、ひさしぶりに会う前から、なんもかも知っとったみたいやったけねぇ♐✐」

 

「あれの地獄耳には誰も勝てんばい☠」

 

 秀正が鼻で笑った。仮にも彼にとっても先輩であるはずの荒生田を、ここでは『あれ』扱いにして。

 

「はん、間違いなかっちゃね☻」

 

 孝治も鼻で笑った。それからテーブルに残っていたコップ入りのビールを、勝手に右手で取って、グイッとひと飲みにした。

 

「お、おい! それはおれのやけね☛」

 

 秀正の文句は聞かない振り。

 

「ぷっはぁ〜〜☀ うわっち、それよかねぇ♐」

 

 少々のアルコールが入ってひと息吐いたところで、孝治は話を切り替えた。ここで本音を申せば、これ以上自分の性転換について、あまり触れてほしくないところなので。

 

「店長に聞いたとやけど、おまえ、新婚旅行の先で宝の地図ば見つけたっちゅうことやねぇ☀」

 

「なんや、もう知っとったんけ✐ ったく、うちの店長も、けっこうおしゃべりやけねぇ✄」

 

 とは言ってくれたものの、秀正に意表を突かれた――という感じはなし。理由はすぐに、自分から語ってくれた。

 

「まあ、もともと宝探しの仲間ば集めてもらうんが目的やったんやけ、おれが店長に話ば通しとったとやけどね✌」

 

 それから孝治の左の耳に口を寄せ、今度は声を小さくして話を続けた。

 

「ここじゃくわしい話はできんとやけど、孝治ば真っ先に誘うつもりやったと……やけど、おまえの性転換は、すっごい計算外やったけどな☢」

 

「そん話は、もうよか☠」

 

 孝治は『また話が戻ったばい☠』を感じた。だけど自分自身の腹は、すでに決まっていた。

 

「それよかそん話、乗ったけね♡」

 

「よっしゃ! 話は決まりっちゃね♡ くわしい話は、またあとでするけ✐」

 

 孝治と秀正はそろってビール入りのコップをカチンと打ち鳴らし、お互いの腕を交差で組み合わせて乾杯🍻した。

 

 ひさしぶりに友と飲み合う生のビールは、ほろりとにがい味がした。


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