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『剣遊記W』

第二章 究極の焼き肉。

     (9)

「お客さん、もしほんなこつワイバーンば生け捕りにすることができましたら、そんときは当店で高く買ってもけっこうですよ♠ しかし御存知のとおり、ワイバーンってやつはあまりに凶暴なもんで、みんな捕獲ばあきらめて、新鮮な死骸探ししちょるのが現状なんですよ☁ やけん悪いことは言いません⚠⛔ やめたほうがいいですって☛」

 

 雷龍軒の板前長が、一生懸命に荒生田を説得した。だがこのサングラス😎の戦士に、聞く耳はまったくなかった。

 

「心配要らんけ♪ おまえらはオレが持って帰るワイバーン料理の準備ばしよったらよかと♥」

 

 ここでも相変わらずの大言壮語を吐いて、鼻で笑い返すのみの態度でいた。

 

「駄目だこりゃ☠ せめて葬式に香典のひとつでも包んでやらな、あとの寝覚めが悪かっちゃねぇ……☂」

 

 ついに説得をあきらめた板前長の深いため息が、すぐそばで見ている裕志にまで伝わった。逆にすっかりやる気の荒生田は、話を聞いて駆けつけた帆柱と到津に、さっそくワイバーン狩りへの誘いをかけていた。

 

「……っちゅうわけっちゃね☀ やけんふたりとも、オレに協力してくれんね✌」

 

 しかし帆柱と到津の返答は、荒生田にとって気に喰わないセリフだった。

 

「悪かけど俺は、前から約束しちょったキャラバン隊護衛の仕事ばせんといけんのやけ✈ これは昔っから世話になっちょうお得意先で、どげんしても断ることができんとばい✄」

 

「ワタシも店長の命で、出張のお伴言われてるあるよ☆ こが〜にときでなければ、喜んでごいっしょするあるのにねぇ✪」

 

 誤解なきように記しておく。帆柱も到津も、決してワイバーンを恐れているわけではない。ただ、自分たちが降りることによって、荒生田にワイバーン狩りを断念するよう話を進めているのだが――案の定サングラスの戦士は、このような心づかいが通じる男ではない。

 

「もうよか! 男ん友情が実は薄っぺらっちゅうことが、よぉ〜くわかったけ♨」

 

 自分勝手極まる妄言を吐きながら、荒生田がふたり(帆柱と到津)に背中を向け、右足で床を蹴って砂をかける真似をする。

 

 まるで子犬である。

 

「ゆおーーっし! わかったけ! ワイバーンば捕まえて帰っても、おまえらにはビタ一文かてやらんけね! 儲けは全部オレのもんばい♨」

 

 さらに荒生田は帆柱と到津に向け、これまた大人げない『アカンベー👅』までやらかした。しかしこの発言は、狩りに(無理矢理)同行させる予定(強制)である後輩の裕志を、完全に置き忘れているとも言えた。まあ、それはとにかく、ここで事態が急展開。

 

「いいや! 儲けは二等分や☆」

 

「なぬっ!」

 

 突然の闖入者の出現に荒生田を始め、この場の全員が一斉に声の方向へと注目した。

 

 見ると厨房の入り口に、人間とアンドロスコーピオンの二人組が立っていた。

 

 無論そのどちらも、荒生田たちの知らない顔であった。


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