『剣遊記W』 第二章 究極の焼き肉。 (8) 厨房での馬鹿騒ぎを、裏で聞いていた者がいた。
「兄貴ぃ! さっきから隣りの部屋で騒ぎよったサングラス😎の野郎が、今度は厨房で変なこと言いよりましたでぇ☝」
便所に行った帰り、ふと覗いた厨房での出来事を、沖台が沢見に吹聴したのだ。
しかし沖台としては、他愛のない単なる馬鹿話のつもりだった。ところが兄貴分である沢見は弟分の報告に、なぜか深い興味を感じた様子でいた。
「なんや? そらどないなことやねん☛☛」
「へい、それがあの野郎……☻♪」
実は内心で『こらあかん、兄貴をマジにしてもうたわ☹』と思いつつ、沖台は今、厨房で起きている騒ぎの説明を続けた。沢見がいったん興味を感じたモノにとことんこだわる性分を、つい忘れていたのだ。
「なんでも自分でワイバーンを生け捕るやなんて、ホラ吹いてやがるんすよ☠ そりゃ確かに、ワイバーンを生きたまんまで捕まえることができたら、すっげえボロ儲けになりまんのやけどねぇ……でも相手がワイバーンじゃねぇ……☠」
沢見も沖台も、ワイバーン肉が巷で大評判な話は知っていた。ただし狩りを行なうには、あまりにも自分たちが力不足である身の程もわきまえていた。そのようなごくふつうの理由で、まったく手を出さなかっただけの話である。
だが今回に限っては、なんだか雲行きが違っていた。
「そん話、出だしからくわしゅう話さんかい☀☆」
「へっ?」
沢見からギロリと念を押され、沖台はなんだか、自分の両目が点になった思いがした。 (C)2011 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |