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『剣遊記 番外編X』

第三章 巨大怪獣、神戸港に出現!

     (5)

「しゃーーしぃーーばいねぇ☹ 衛兵隊がおるっちゃよ☢」

 

 荒生田が舌打ちをしたとおり、鎧で身を固めている兵庫県の衛兵隊員たちが、物々しい顔付きで、街道の警備を行なっていた。

 

 あとで到津がこっそり、当の衛兵隊に理由を尋ねてくれた。それによると避難する人たちとは逆で、野次馬気分になって怪獣を見物しようとする不届きな連中も多いらしかった。そのための取り締まりで、このような警備も始めたとのことらしい。

 

 その野次馬たちの気持ち、わからないこともないのだが。

 

 とにかく当然ながら、街の方向に進もうとしている荒生田たち一行の姿が、衛兵隊の目に留まる展開となったわけ。

 

「おい! そこの者たち、どこ行く気やぁ!」

 

 初めっから威圧をかけるような感じ。早速大きな声で怒鳴ってくれた。

 

「こっから先はもう戦場なんやぞ! おめえら民間人が行くような場所やないんやぁ!」

 

 恐らく怒鳴った野郎が、この場での隊長格なのであろう。それこそ民間人相手に腰の剣をチラつかせ、日本国の納税者を威嚇。慇懃無礼な態度を披露してくれた。

 

 一般の人々の場合、ここで反抗するか、あるいは怖気づく場面であろう。しかし、この世の表と裏をすべて知り尽くしている(少なくとも自分ではそう思っている)荒生田は、そのどちらにも該当しなかった。

 

「へいへい、わかりやんした☻ すぐに戻りますです、はいはい☚☛」

 

 荒生田お得意の、言わばお調子者的へりくだり姿勢。だけど、頭がやっぱり固そうに見える衛兵隊長には、このような安直な太鼓持ちは通用しなかった(そもそもこれって太鼓持ちなのか?)。

 

「な、なんや! そんけったいな態度はぁ!」

 

 荒生田のふざけた対応の仕方を見て、逆に馬鹿にされたと勘違いしたようだ。荒生田たち一行に向けて、さらに大きな声を張り上げる始末となった。またそうなれば、次に荒生田たちが取れる手段といえば、もうこれしかなかった。

 

「やばかっ! みんな逃げるっちゃ!」

 

 慌てて方向を転換。元来た道を逆走した。


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