『剣遊記 番外編X』 第三章 巨大怪獣、神戸港に出現! (4) 「せ、戦士の旦那ぁ……もう神戸の街はお終いなんやでぇ♋ 怪獣がメッチャメチャに暴れ回ってまんのやぁ☠」
「ゆおーーっし! わかったわかった☆☆」
途中ですれ違う新たな避難民から、さらに最新の情報を集めながら、なおも神戸市への足を急がせる、荒生田たち一行。そんな中で静香が、急に大きな声でわめき始めた。
「あ〜〜ん! 今思い出したんさぁ、神戸の街って、あたしも戦士の修行時代によう遊んであるって、青春さ謳歌した所だったんだがねぇ☂ それさメチャクチャにぼっこすなんて、もう絶対に許せなぁーーい♨」
そのおまけのつもりなのか。怒りの矛先を、今度は小心魔術師のほうへと向けた。
「そうだがね裕志さん! 絶対に神戸の街の仇討ちさするだがね♐ これさあたしからのお願いなんだからのぉ☛」
「は、はい♋」
『お願い』とは、超立派に名前ばかり。実質、正真正銘の命令押し付け。これに実は、いまだに自分自身の『やる気』がめばえていない裕志であった。しかしここまで強く迫られては、元より拒める術はなし。
とにかく荒生田たち四人は快調(?)に現場へと道を急ぎ、神戸の街にかなり近づいた所――六甲{ろっこう}山地辺りまでたどり付いた時点だった。そこで一行は、立ち往生とも言える現状に置かれてしまった。
その理由は山を越えて逃げてくる避難民たちの数が、あまりにも多かったからだ。だから道路という道路はすべて、進行方向から逃れてくる人々によって、完全に行く手を遮られていた。
おまけに道の先には、新たな障害も存在していた。 (C)2015 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |