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『剣遊記 番外編X』

第三章 巨大怪獣、神戸港に出現!

     (12)

 全員――と言っても、ドラゴンに変身中である到津は、せまい浄水場の前まで入れなかった。だから荒生田の指図でその場まで下りていた裕志、静香の両名は、慌てて浄水場の前から地上への階段を駆け上がった。

 

 到津といっしょに、空へと避難するために。

 

「きゃっ! 裕志さんも早くぅ!」

 

「あん! 待ってくださぁ〜〜い!」

 

 ちなみにこの浄水場のある場所は、神戸市の中心街から、やや北側に離れた辺ぴな所。それでもここは、六甲の山並みから流れる清水が市民のノドを潤わせている、とても重要な聖地ともいえた。

 

 そのせっかく美味なる水源を、これからブチ壊しにするわけなのだ。

 

「で、出ますぅーーっ!」

 

 青年魔術師――裕志の叫びに、地下の変動が完全に呼応していた。

 

 やがて、クァオオオオオオオオン!

 

 ――と、一応やる気になっている感じの新造キマイラ――バルキムが(なにしろふだんからやる気が全然なしの裕志と同人格なものだから、これはかなり珍しい事態と言えたりして)、巨大な姿を地上へドドドドッと踊り出させた。


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