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『剣遊記12』

第三章 陰謀渦巻く公爵家。

     (14)

「なんやと、こんでけん女がぁーーっ!」

 

 連中も、ある程度の予測ぐらいはしていただろう。だがはっきりとした孝治の返答に、彼らはこれまた在り来たりな罵声を返してきた。

 

「よーし、ええ度胸しちょうのぉ、こん女♨ こげんなったらここの全員で連れ回したろうけぇ!」

 

「そっちが『こげんなったら』やったら、おれかて『こげんなったら』っちゃね♥」

 

 容易に引かない連中の態度を見て、ついに孝治も腹をくくる決心をした。

 

 黒崎店長には申し訳ないが、我慢にも限度があるもの。孝治の場合その許容量が、あまり多くない部類なもので。

 

 また、この世には『野蛮人』なる差別が存在する事実も、孝治は体感でよく知っていた。だが、現在瞳の前にいるこいつらには、まさにその言葉を献上しても、なんの間違いのない下郎どもなのだ。

 

 念のためチラリと、孝治はうしろを向いた。友美と涼子に瞳を配ってみたのだ。ふたりとも、無言でうなずいてくれた。やはり現在の状況を、ふたりとも理解してくれているようだ。

 

「『こげんなったら』の繰り返しっちゃけど、おれはとっくに、違う意味で遠慮なんか放棄しとうけね☻ おっと、もともと初めっからしとらんかったかもね☠」

 

 そんな不敵極まるセリフを吐いてから、孝治は腰の剣に、再び右手をかけてやった。すると今度は、半そでシャツの阿羽痴がそのシャツを脱いで、いきなり自分の小汚い背中を、孝治たちに見せつけてくれた。

 

「おう! ねーちゃん、よう言ってくれたのぉ!」

 

「うわっち!」

 

 初めはその奇抜な行動に、孝治もたまらず仰天した。だけど、すぐにそいつの真意を察知。ある意味の納得をしてやった。

 

「それって……入れ墨け?」


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