『剣遊記12』 第三章 陰謀渦巻く公爵家。 (10) 『実はやね、うちにも昔、そげな素性っちゅうか、得体の知れん魔術師が顧問ってことで、曽根{そね}家に来たことがあったと✍ それはあたしが、まだ生きとったときの話やけどね☎ で、そんときはそいつのほんなこつの目的……つまり家の乗っ取り計画がわかったもんやけ、早めに衛兵隊にそいつば突き出して、すべて事無きにできたっちゅう話っちゃよ✌ 解決の理由は、こんあたしがこっそりそいつの企みば盗み聞きしたからなんやけどね✌ やけん今回のその東天ってのも、そうやなかとやろっか?』
少々――と言うより、かなりに自慢げなのだが、涼子がかっての自分自身の手柄話を語ってくれた。
(涼子っち、生きちょったときから、人ん話ば盗み聞きするんが得意やったんやねぇ♋)
これは口には出さないでおく。
「ふぅ〜ん、とにかくなんか、気ぃつけたほうが良さそうっちゃねぇ☹」
『ふふん♡ あたしん言うたことに、間違いなかっちゃけ☀』
涼子の無意味な鼻高々も、この際脇に置く。しかし孝治は、確かに耳ば傾ける必要がありそうな涼子の話っちゃねぇ――と、友美にはこっそりとささやこうとした。このとき貴明が、ふいに少々脇にそれるような話を、こちらもこちらで孝治たちにささやいてくれた。
「ところで皆さん、今はこげんして男女いっしょん部屋になっとうとですけど、なんか不都合なところはございませんか?」
「そ、それっちゃよ!」
不審な魔術師の話をもう忘れ、孝治は貴明の言葉に飛びついた。
「た、貴明さん、おれ、今夜は別ん宿屋に泊まりたかですけど、どっかええとこなかですか?」
とにかく荒生田との同室が嫌な孝治は、すぐに部屋の相談を持ちかけた。貴明はもろ、目玉を丸くしていた。
「えっ? こん部屋ばお気に召しませんか? そげんやったらしょうがなかですねぇ☺ 僕ん顔で、町内の宿屋ば探してみましょうけ☞」
「ありがと♡ 助かりますっちゃよ♡」
孝治は飛び上がるほどに喜んだ。天井があまり高くないので、文章上の表現だけに留めるけど。
「じゃあ友美に涼……い、いや、いっしょに行くっちゃね♥」
さっそく同伴するべきふたり(友美と涼子)を連れ、孝治は貴明の案内で、部屋から出ようとした。
「ゆおーーっし! 仲良うオレと、宿屋ば探すとすっかねぇ☆☆」
なぜか荒生田も孝治の左手を握り締め、宿屋探しについてきた。
「……なして、先輩までいっしょなんすか?」
この当たり前過ぎる孝治の問いに、サングラス😎の先輩は、ほとんど平然顔で答えてくれた。
「孝治はこん部屋ば気に喰わんとやろ☻ 実はオレかてそうなんよ☻ やけんいっしょに泊まれる部屋ば探すったい☀」
「さっきのケンカの原因ば、もう忘れたんけぇーーっ! こん人間ウツボカズラぁーーっ!」
孝治からズッコォーーンッッと尻を蹴られ、荒生田が窓から外へと飛び出す顛末も(描写が遅れたけど、ここは二階)、これはこれで無理からぬ出来事であろう。
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