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『剣遊記11』

第六章 小太郎、故郷へ帰る。

     (14)

 けっきょく総計三枚(けっこう謙虚)の古い――美奈子が言うには価値のあるらしい旧貨幣を、孝治はちゃっかりと巻き上げたわけ。

 

「これから気ぃつけるっちゃよ♡」

 

 お宝の貨幣――つまり見逃し料のワイロを受け取った孝治は、我ながら白々しい自分を承知で、美奈子と双子姉妹に偉そうな態度で言ってやった。

 

 これははっきりと申して、まさに『お互い悪よのう☠』の世界。当然友美と涼子の反発を招いていた。

 

「ちょっと孝治ぃ! そげなこつでよかねぇ!」

 

『あたし、孝治んこつ見損のうたっちゃよ!』

 

「まあまあ、これはふたりの分っちゃね♥」

 

 ところが孝治は、逆にニッコリ気分でふたり(友美と涼子)に応じるだけ。友美の右手にこっそりと、貨幣のうちの二枚を手渡してやった。そのうちの一枚は、涼子の分というわけ。

 

「うん、もう☁ 今回だけっちゃよ☢」

 

 友美はなんだかうしろめたそうな顔付きで、孝治にうなずいてくれた。それから涼子のほうは、これまたあっさり、憤慨の気持ちを解消していた。

 

『きゃっ♡ うれしかぁ♡ あたしの分ばもらってくれたっちゃねぇ☀』

 

 もろに無邪気な喜びようで。

 

 孝治を始め三人とも、実に軽い性格をしているものだった。つまりがまたまた早い話。孝治と友美と涼子は三人が三人、性格が似たり寄ったりと称しても、ほぼ間違いがないだろう。


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