前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記 超現代編U』

第一章  工業高校、激震走る!

     (5)

 だが本番は、これからだった。おれでも予想できなかった事態が、我が港南工業高校にて多発する展開となったのだ。それは女性化した孝治が、性転換以前では想像不可能なほどの行動っぷり――今度は『ドジっ娘{こ}』属性を発揮し始めたのである。

 

 第一番の被害者(?)は、同じB組の枝光正男{えだみつ まさお}だった。

 

 とにかく現場で目撃した者から、おれがあとで聞いた話。正男は孝治といっしょに、図書室である本を探していた。まあ目当ての本はすぐに見つかったのだが、問題は棚が高過ぎて、背を伸ばしても届かない所にあることだった。当然図書室に常備してある脚立を使ったとのことなのだが……☁

 

 それがいけなかった。

 

「ちょっと脚立の足、押さえてて……♋」

 

「あ、ああ……

 

 親切心からか、それともこれもレディーファーストなのか。棚の高い所にある本を取ろうとして脚立に上がった孝治を、下から正男が支えたという。ところが不幸なことに、孝治がバランスを崩して、あえなく床まで落ちそうになる事態となった。

 

「わわっ! 危ねえっ! わあーーっ!」

 

 と正男。

 

「うわっち!」

 

 この『うわっち!』なるビックリ表現は、孝治の男時代からの口ぐせである。とにかく床までドシンと落ちた孝治であったが、幸か不幸か、正男が下敷きになってくれたおかげで、本人は無事に済んでいた。

 

「痛たたたたたっ

 

 結果、孝治は尻餅を突いた格好。だが真の『幸か不幸か☠』は、これからだった。

 

「むぎゅうううううううっ☠」

 

「うわっち!」

 

 なんと孝治の尻は床についたわけではなく、正男の顔面を着地点としていたのだ。つまり孝治の女性化したお尻が、真上から正男の鼻先に乗っかって埋め尽くしちゃったわけ。

 

 これをラッキースケベと言わずして、いったいなんと呼称すれば良いのやら。

 

「うわっち! ごめん!」

 

 孝治は大慌てで、下敷きにしている正男の顔面から飛び上がったと言う。ところがまともに尻に敷かれていた正男のほうは、とても幸福そうな顔でいたそうだ。

 

「気持ちええ〜〜♡」


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system