前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記 超現代編U』

第一章  工業高校、激震走る!

     (2)

 その転校生――ではなかった女子生徒の顔をよく見れば、確かに見覚えのある、クラスメートの鞘ヶ谷孝治だった。

 

 体全体の線が少し細くなり、体格も事故入院前よりかなりに小柄化しているが(ついでに言うと、頭の輪郭もかなりに小顔化。その代わりにほっぺたなんかが、実に女の子らしくふっくらとしていた)。

 

 とにかく、つい先月までB組の同級生だった鞘ヶ谷孝治が、見事な女子生徒となって、ひと月ぶりに学校に現われたわけなのだ。

 

 なお、つい先月に起きた出来事は、この孝治が不運にも交通事故に巻き込まれ、全治四週間にも及ぶ大ケガを負ったこと。幸い命に別状はなく、骨折にも至らなかったので、入院が一箇月程度で済むこととなったわけ。

 

親友と言えるのかどうかまではわからないけど、一応友達であるおれは、お見舞いなんかで何回か、入院中の孝治と会うこともできていた。だがそのときは、立派な男子だった――はずだ。

 

 それが、なぜ?

 

 その疑問と謎について、帆柱先生が説明をしてくれた。

 

「いや……僕も教師を務めて長いんだが、教え子の性別が変わるなんてことは、これが本当に初めての経験だ♋ なんでも退院間近になって急に体に異変が起き始め、わずかな間で体が男から女に変わってしまったと言うんだが……実は初め、鞘ヶ谷に転校の話もしてみたんだが、本人がどうしてもエンジニアになりたいと言う夢をあきらめられないので、このままこの高校にいさせてほしい、と言う本人の希望を尊重したわけだ しかし戸籍の男女の変更のほうは、本人がまだ動揺しているので、少なくとも高校を卒業するまでは、今のまま男性でいるそうだ✍ とにかく、見てのとおりの完全な女子生徒になっているが、これからも今までどおり、入学したときからのクラスメートとして仲良くしてやってほしい✌ ほら、鞘ヶ谷からも、なんか言ってみろ☞

 

「は、はい……み、みんな……これからもよろしくぅ……お願いします☂」

 

 帆柱先生からうながされ、芯から恥ずかしそうに上半身をペコリと下げる孝治の姿が、本当に可愛く見えて仕方のないおれが、ここにいた。

 

ついでで言えば、声音もしっかりと、女の子の声。それも正真正銘のアニメ声になってるよ。これは孝治が声帯から骨格すべて、本当の本当に女性化したという証明なのだろうか。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system