『剣遊記Y』 第四章 金髪魔神あらわる。 (16) 「ひ・み・つ、ねぇ……けっきょく隠し事だらけで行っちゃったっちゃね☁ あの魔神さんとやらは♐」
唖然の思いで千恵利を見送った孝治のつぶやきに、友美が肩をすく竦{すく}めながらで応じてくれた。
「まあ、よかやない♥ 無理に追及せんかって♥ 千恵利さん、悪い魔神やなさそうやけ♡」
「まっ、それもそうっちゃね♪」
孝治も気を取り直し、コクリとうなずいた。ここでこっそりと千恵利を尾行しようとしていた涼子に、孝治はひと声かけて止めさせた。
「おっと! 千恵利さんのあとば尾けて正体探ろうなんち、せんほうがよかっちゃけね☢ なんと言っても魔神なんやけ、本気で怒らせたら怖いっち思うばい☠」
『あっ、わかっちゃった♡』
止められた涼子が千恵利と同じように、これまた可愛い娘ぶって舌を出す。
この時点において、孝治、友美、涼子の三人とも、浴場で宙吊りにされたままでいる荒生田を、完全に忘却しきっていた。あれでも一応、孝治の先輩であるはずだが。 (C)2012 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |