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『剣遊記 番外編Y』

第四章 君は薔薇薔薇、ボクはバラバラ……ていう感じ。

     (23)

「あら? あんたら生きとったん?」

 

(まだ邪魔モンがおったばいねぇ〜〜☢)

 

 なにもかもが終わった時点で現われた杭巣派たちに対し、律子はもう、『メンド臭かぁ〜〜☠』の思いしか、胸に抱く感情がなかった。

 

 徹哉の胴体(上下分割)と両手両足。それらを城の庭に落ちてあったボロ縄でくくり付け、さあ帰るばい――とした矢先に――である。

 

「もうしかたもない! ええ加減にしんしゃいよ!」

 

 確かにこれでは、律子も大きな声で苦言を叫ぶ気持ちが、まったく抑えられないと言うもの。そんな律子たちには構わず――と言うよりも、もともとから人の気など、それこそ知ったことではないのだろう。

 

「けへへっ、どげんして俺たちが生きちょったか、教えてやろうかね☻」

 

 誰も尋ねてなどいない。それでもよほど自慢がしたいようだ。炉箆裸(の馬鹿)が勝手にペラペラと、よけいなおしゃべりを始めてくれた。

 

「なんだかんだ言うたかて、マミーっちゅう奴は脳味噌が完全に干からびてアホになっちょんやけねぇ♾ ここにおる全員で地下の迷宮ば逃げ回れば、簡単にまくことができて助かったっちゅうことっちゃね★ あいつ、自分が死んだ城やっちゅうとに、そこに仕掛けとう迷路でてめえ自身が迷っちまうんやけ、皮肉っちゅうたら皮肉っちゅう話っちゃよ☻☻」

 

「そげんちゅうことね☞ やけんあんたたちば追うこつあきらめて、地上におるわたしらば追って、マミーがこっちに来たっちゅうわけばいね♐⚐ こっちはとんだ迷惑やったばい♨」

 

 理由を知ってしまえば、実に他愛のない話。それでも律子は、憤懣やるせない気持ち。それはけっきょく、彼ら盗人一味が楽をしてくれたおかげで、こちらが怪物退治を押し付けられた格好となったものだから。

 

 それはそうとして――だった。

 

「問題ハ、ムシロコレカラナンダナ。コレハツマリ、前カライタ敵ガ、再登場シタワケナンダナ。ミンナ元気デスカァーナンダナ」

 

 首だけの徹哉が、律子の小脇で指摘するとおりだった。つまりが一難去ってまた一難。ただでさえ厄介なマミーを、やっとの思いでやっつけたばかりだというのに、また片付けないといけない、ゴミのような連中が再浮上したわけ。

 

 だけど律子も秋恵も、今や連中に対する恐れの気持ちなど、微塵も感じていなかった。それよりも改めて驚いている側は、当然杭巣派たちのほうだった。

 

「うげっ! そいつ首だけでしゃべっちょうとね♋」

 

 これもまた、当たり前の反応であるだろう。だが律子はもはや、彼らの驚愕など、完全に無視してやった。


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