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『剣遊記 番外編Y』

第四章 君は薔薇薔薇、ボクはバラバラ……ていう感じ。

     (22)

 それまでかろうじての余力を保持していたのだろうか。マミーを倒したあと、ただ現場でポツンと立っているだけだった徹哉の胴体。それが突如、両腕、上半身、下半身、両足と、まるで六分割をされたように、ガラガラガッシャアアアアアン!――と、バラバラになって崩れ落ちたではないか。

 

「きゃっ! 徹哉くんが壊れちゃったばぁい!」

 

 衝撃の連続ばかりが続いたせいか、それほど大きなビックリを表現していないところが、端で見ても不思議。秋恵がそれなりに平凡な驚きの声を張り上げた。しかし律子のほうは、これはもはや、半分お約束みたいな話の展開だと感じていた。

 

「やっぱ『あんどろいど』っち、変わった種族ばいねぇ☻ 人がちょっと当たっただけで、こげんバラバラになるんやけねぇ☢」

 

 さすがに平静の域からは、やや離れていた。それでも今や、慣れの境地に達している心境。そのような自分自身をも驚異的かつ客観的に見る思いで、律子は地面に散らばった徹哉の体のパーツ(?)を、上から眺めてみた。

 

 なにしろ律子自身も薔薇の花に変身するし、後輩の秋恵はホムンクルスで、体をどんなかたちにでも変える特技(?)があるのだ(きょう初めて拝見したのだが)。これらの言わば、『自分自身のこと』があるわけ。そのため律子はもちろん、秋恵も恐らく徹哉のこの事態を、今さら大きな事件として感じもしないのだろう。それどころか当の徹哉自身が、自分に降りかかっている災難を、完全に他人事の感じで言ってくれるだけ。

 

「ダカラ言ッタンダナ。火炎攻撃ハボク自身ノぼでぃニ大キナだめーじガアルカラ、アマリ使イタクハナカッタンダナ。マア、工場ニ持ッテ帰レバ、マタ元ドオリニ修復ガデキルンダナ。ヤッテヤレナイコトハナイ、ヤラズニデキルハズガナイ、ナンダナ」

 

 実際、本人がこれだけ落ち着き払っているのだから(?)、律子と秋恵も、もはやなにも動揺していない現状。まあ当然と言えたりして。

 

「それじゃもう帰るばい✈ 徹哉くんの体はわたしと秋恵ちゃんで、分けて持って行くことにしましょ⛹」

 

「はぁ〜〜い♥ でもなんか重たそうばいねぇ⚠⛐」

 

 肝心の宝探し修行は、盗人集団やアンデッド怪物の登場で、思いっきりに邪魔をされた感じ。しかも帰りは、重たい荷物運び。これではけっきょく、要らない苦労がきのうの夜から続いただけ――と言えるのかも。

 

「盗賊のお仕事って……覚悟はしとったとばってん、ほんなこつ大変なんばいねぇ〜〜☹」

 

 秋恵が深いため息を連発した。

 

「こがんして、『骨折り損のくたびれ儲け』っちゅうことも覚悟ばしとかんといけん、っちゅうことですねぇ……ほんなこつきょうは、ええ勉強になりましたぁ……☁ 先輩⛑」

 

「そうばいねぇ☻」

 

 律子も苦笑混じりの思いで、後輩のため息に連動してやった。

 

 このようにして三人(律子、秋恵、徹哉)、無事で未来亭に帰れたら、この話はこれにて一応終了――とはならなかった。それは今ごろになってノコノコと、城の迷宮に逃げ込んでいたはずの杭巣派一味が、正面の門からひょっこりと顔を出したからだ。

 

「へへっ☻ どうやらミイラは、おめえらが片付けてくれたようっちゃねぇ★♥」


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