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『剣遊記 番外編Y』

第四章 君は薔薇薔薇、ボクはバラバラ……ていう感じ。

     (21)

「ハイ……ナンダナ。ボクハ君ノタメナラ死ネルンダナ」

 

「しぇからしかぁーーっ! やれっちゅうたらやりんしゃーーいっ!」

 

 くどい言い訳に、とうとうしびれを切らした気持ち。ついでに徹哉の言うセリフの意味もまったく考えないまま、律子は命令口調で一気に怒鳴りつけてやった。するとボロボロになっているマミーの真正面に立つ、徹哉の胴体――その腹部からであった。着ている背広(こちらもかなりにボロボロ)をバリッと破って、そこからボワァーーッと、まるでドラゴンが火を吐くかのごとし、真一文字に火炎の帯が放射をされたのだ。

 

 その火炎が古のアンデッド――マミーをそれこそ、灰も残さずに焼き尽くした。

 

 説明をすれば長いが、実際はほんのわずかな間の出来事だった。火炎の跡にはマミーの立っていた辺りの地面が黒コゲとなって、怪物自体はひとつまみのカケラすら残存していなかった。

 

「やったぁーーっ☆☆ ほんなこつ勝ったろーもん☀ 徹哉くん、だんだんおーきん☺♡」

 

 今度こそ徹哉の完全勝利をその目で見届け、秋恵が何度も注意されているのに自分の裸を忘れ(超能天気)、この場でピョンピョンと跳ね回った。

 

 律子はもはやツッコミもあきらめ、徹哉の生首(?)をかかえたまま、彼の胴体のほうへと近づいてみた。

 

 かなりな緊張を自覚できるような歩き方で、ギクシャクと。

 

 それと言うのも、生きている――らしいとは、頭ではわかっていた。だけど、やはり首の無い体だけの存在は、どこか違和感有り過ぎな光景なものだから。

 

「……て、徹哉くんが言う『あんどろいど』っちゅうのがどげな種族なんかいっちょも知らんとばってん、頭と体が離れても生きていけるなんち……よっぽど生命力の強か種族みたいばいねぇ✍ ふつうの人間なんち、まるで目じゃなかみたい……あっと、今急に思い出したとやけど、デュラハン{首無し騎士}もこげな感じやろっかねぇ?」

 

 ここでまた、律子の小言を耳に入れたらしい徹哉が、これまた相変わらずのとぼけた口調。

 

「でゅらはんハボクモ知ラナインダケド、種族ッテ言ワレテモ、ボクガソウイウ部類ニ入ルノカドウカ、ボクニハ全然疑問ナンダナ。マサニ記憶ニゴザイマセン、ナンダナ。マア、今ハソレデモイイッテコトニシテオクンダナ」

 

「徹哉くんが言いようことって、やっぱし意味がいっちょもわからんばいねぇ〜〜✍」

 

 律子はもう、いちいち突っ込む気にもなれなかった。それよりもマミー相手に善戦(?)をした(頭の無い)胴体の右肩を、ねぎらいのつもりで、うしろからポンと軽く右手で叩いてやった。

 

「か、体んほうも、どうもご苦労さんやねぇ☺」

 

 ところが、そのとたんだった。


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