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『剣遊記 超現代編U』

第四章 史上最大級の危機襲来!

     (4)

「うわっちぃーーっ!」

 

「うぎゃっ!」

 

 なんと脱衣場に駆け込んだはずの孝治が、今度はさらにそれ以上の大慌てぶりで、浴場にバタバタと戻ってきたのだ。右手で隠しても隠しきれない豊乳を覆い、左手はバスト以上に大事な下の部分をふさいでいる(?)格好で。

 

 これはもう、さっきの背中全裸などの比ではない。まさに一世一代の、堂々正面ヌードではないか。

 

 たぶんこの光景は、おれの目に一生焼き付くことになるだろう。

 

「ど、どうした!♋ うわぁーーっ!」

 

 とにかくおれは、戻ってきた理由を尋ねようとした。しかしその前に、孝治は盛大なお湯しぶきを上げて、再び湯船にバシャーーンと飛び込んだ。こちらまでお湯のかぶりまくりである。

 

 それから湯面に顔を上げて孝治が深呼吸をやらかし、ようやくで急に戻ってきた理由を言ってくれた。

 

「す、すぐに着替えようとしたら、外から和志っとか裕志たちの声が聞こえたもんで、大急ぎで服を全部隠して、また急いで元に戻ったんだよ! いくらなんでも、みんなに裸を見られるのは、さすがにまずいもんで……☠」

 

「あちゃあ〜〜⚿⛐

 

 おれの頭に激痛が走った。それはとにかく、恐るべきB組の面々が、早くもご登場したわけだ。そいつらが浴場に入る前に、なんとかして孝治を隠さないといけない。まさに進退窮まった思いで、おれは浴場内をキョロキョロと見回した。ここで幸いと言っては変なのだが、状況説明を繰り返す。すでに解説済みだが、この浴場の湯船には真ん中に大きな円柱状の柱が建っていて、その裏側に入れば、どうにかして身を隠すことができそうだ。これをご都合主義と笑うなら、笑うがいい。

 

「は、早くあの柱のうしろに隠れろ! あとはおれがなんとかしてごまかすから

 

 成功率は極端に低そうだけど、今はこの柱に賭けるしかないようだ。

 

「うん……

 

 孝治も考える余裕はなく、逆にワラをもつかむ思いなのだろう。おれから言われたとおり、こちらに背中(下半身がお湯の中なので、さっきの正面には及ばない衝撃度だが、とにかく二度目の背後全裸)を向けて、柱の陰に身を入れた。

 

 文字どおりの身ひとつ――である。

 

 それからほとんど間髪を入れずして、我がB組の面々――ヤローどもが、ワラワラドカドカと浴場に入ってきた。


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