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『剣遊記 超現代編U』

第四章 史上最大級の危機襲来!

     (10)

 孝治が過ぎ去った過去の出来事を根に持たない性格であることを、ここでおれに再認識をさせてくれた。

 

 それはおれから初めて完全ヌードを見られたというのに、怒りはそのときだけ。部屋に戻れば何事も無かったかのごとく、いつもどおりにおれとワイワイやってくれたからだ。

 

 誤解のないように言っておく。『ワイワイ』とは修学旅行のときっとか旅館の部屋で、クラスの連中が就寝時間近くになっても枕投げなんかをやったりして、いろいろと遊び続けることである。

 

 決しておれと孝治がイチャイチャしているわけではないので、念のため。

 

 ちなみにその時間、おれと孝治とその他の面々で、トランプのババ抜きが、帆柱先生から怒られるまで続けられた。

 

 それからさすがに眠くなったので、部屋の電気を消して、全員で布団に入ったわけ。もちろん孝治とは、同室とはいえ布団は別々なので。念のため。

 

 おれたちって、平和だよなぁ〜〜☕☺ ……って、冗談じゃない! 今になって気づくおれは、本物の大愚か者ではないか!

 

 ここまでわざとボカしていたが、賢明なる読者諸君は、とっくに気づいていたはずだ。今さら言うまでもなく、野郎どもの集団の中に、(元男とはいえ)女の子ひとりが同室で就寝するのだ。そんな超重大な大問題に、布団に入ってから意識してしまうなんて。

 

 急に心臓がバクバクドキドキしてきたおれは、声を立てないようにしてそっと起き上がり、先に寝ているはずの孝治の寝顔(だろう、たぶん)を覗いてみた。孝治は寝付きが良過ぎるのか、早くもスースーと静かな寝息を立てていた。

 

 電気を消して完全な暗がりの中なので、どんな顔で寝ているのかはわからなかった。ただ寝息が確実に可愛いのは事実だ。

 

「秀正も眠れんのか?」

 

「か、和志もか?」

 

 気はつけば孝治の寝顔を覗いているおれの背中から、どうやらやはり眠れていないらしい。和志が小さな声で話しかけてきた。

 

その和志が言った。これで意外だと言うのは超失礼なのだが、スケベな和志も無防備で寝ている孝治には、今のところ手(?)を出さないようにしているみたいだ。

 

「寝れないのはオレたちだけじゃねえぜ☠ B組のヤローども、全員だぜ☢」

 

「あっ……なるほど……☁」

 

 見回せば本当に和志の言うとおりだった。B組のヤローども全員、暗い中で布団から上半身を起こして、見えないながらも明らかに悶々とした感じの、荒い息を洩らしていた。例外はただひとり、なぜか本当に無防備かつ安心しきっている感じで就寝している、孝治のみだった。

 

 どうしよう……今夜はおれたち全員、一睡もできないかもしれない。


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