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『剣遊記X』

第五章 結論、美奈子はやっぱり恐ろしい。

     (7)

「あ、ほんなこつ☀」

 

 すぐに友美が、剥がれかかっているという部分の金を、右手でつまんでみた。すると、パリッと金箔のような薄い物が取れ、その下からは木の木目が見えていた。

 

 これにて友美が断言した。

 

「これ、木の輪に金のメッキが貼ってあるだけっちゃよ!」

 

「へぇ〜〜、そげんこつね✐」

 

 孝治は大して驚かなかった。反対に美奈子は、過剰な反応を起こしていた。

 

「それほんまどすかぁ! よーいわんわことやおまへんかぁ! これはいったい、どないなことでおますんか!」

 

 まるで鬼神のごとく、美奈子は静香を問い詰めた。だけど当のバードマン娘は、ケロッとしたもの。

 

「だがらぁ、これは金色さしたふつうの輪っかだにぃ✱ お祭り用に何十年も前から使っでるらしいんだどもぉ、村の男衆は成人の試練で、毎年これさ取りに山さ登ってかついで降りることになっとるんだべぇ✌ まあ、何十年も使っでだら、さすがに金箔も剥げるんだがね✍ もしかすてあんた、これが全部、金で出来とったって思っでただべか?」

 

「…………☁」

 

 美奈子が絶句した。恐らくは『当たり前どすえ☆』と言いたかったところを、ぐっとこらえて飲み込んだのだろう。

 

(そげんこつば言うたら、馬鹿丸出しやけねぇ〜〜☠)

 

 口では恐ろしくて言えないので、孝治は内心でつぶやいた。そんな孝治の見ている前だった。美奈子の足がガクガクと震えていた。

 

「師匠! 顔色青いで!」

 

 千秋が美奈子の異常に気づいたときには、すでに遅かった。美奈子はカラスに襲われたときよりも、遥かに強い精神的衝撃を受けた様子。ついに孝治たちの見ている前で、バタリと失神。仰向けに倒れてしまった。

 

「きゃあ! 美奈子さんが気絶しちゃったぁーーっ!」

 

「ああん! 美奈子ちゃん、起きてくだしゃいですうぅぅぅ!」

 

 友美と千夏も騒いでいた。とにかくこの有様は、美奈子が公衆の面前で初めて披露した、乙女らしいか弱き一面だったのだ。


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