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『剣遊記X』

第五章 結論、美奈子はやっぱり恐ろしい。

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 千秋と千夏が通訳をした、赤毛のリスこと可奈の話――と言うより白状によると、彼女は自分が今までに集めたあらゆるお宝を、本州の最北端、青森県のある町に隠しているとのこと。

 

「ほな、そう言うことで✌ あとのことはお頼み申しますえ✈」

 

「千秋がおらんでも元気しとくんやで☆」

 

「皆しゃん、バイバイさんですうぅぅぅ♡」

 

「そんじゃあ美奈子さんに千秋ちゃんに千夏ちゃん、気ぃつけてくださいよ★ あっ、そうそう、可奈さんもね☢」

 

 プロの魔術師たちにこのような気づかいは無用など、百も承知。それでも怒らせたら怖い事実を知り尽くしている孝治は、四人の旅立ちに、丁寧な見送りの言葉を献上した。

 

 静香の村の入り口で、北へ向けて旅立つ魔術師師弟たち+お伴で荷物運び役の角付きロバを見送る者は、孝治、友美、涼子と裕志、由香の五人だった(例によって、幽霊は秘密のまんま)。

 

 魚町と静香は祝言の準備とかで、村長一族がどうしても離してくれなかった。そのためこの場には不在中。ちなみにふたりは結婚後、そろって北九州市に移り住む予定になっていた。静香の就職先は、もちろん未来亭。そこで彼女は、新人戦士として雇っていただくつもりでいるのだ。

 

「一人娘ばよう、遠くに行かせる気になったっちゃよねぇ〜〜♐」

 

 花嫁の父の心意気に、友美は大いに感心していた。

 

 孝治もこれに応えた。

 

「一人娘っち言うたかて、静香には上に五人も兄貴がおったけねぇ☝ そんで娘ば旅立たせてもええって気になったとちゃうやろっか☺」

 

 とりあえずの試練とやらを終え、一行が赤城山から山賊一味を引き連れて、村まで下りたときだった。この思わぬ大手柄に、孝治たちは村に初めて来たとき以上の、盛大な拍手👏で迎えられた。

 

 このとき静香の兄たちとも、初めてお目見えをした。ところがこれが、そろいもそろって、筋骨隆々のマッチョマンばかりだったのだ(もちろんしっかりと翼もある)。

 

「静香が先輩に惚れた理由が、さらによくわかったっちゃね☆☆」

 

「なして?」

 

 今にして思う推測を、孝治は友美に答えてやった。

 

「あんだけの筋肉男ばっかに囲まれて育ったら、それが男ん中の男やっち洗脳されちまうもんばい☀ 先輩なんかは特に、その典型なんやけねぇ♥」

 

「そうっちゃねぇ〜〜……あっ、美奈子さんが行かれるみたいちゃよ☞」

 

「あっ、ほんなこつ☛」

 

 友美に言われて、孝治も改めて頭を上げた。見れば美奈子が見送りの五人に向け、丁寧に頭を下げていた。


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