『剣遊記Z』 第六章 華麗なる美の戦士? (4) 「おっ! お出ましのようっちゃね♡ いよいよ孝治のヌードのご披露ってとこばい♡」
すっかりウキウキ顔をしている秀正から手招きされ、孝治は清美たちのいる場から、いったん離れた。それから酒場の真ん中まで行けば、演芸舞台の上にて赤い幕をかぶせた絵を手押し台車で運び、中原が偉そうな素振りで現われたところ。
「ずいぶん仰々しいご登場の仕方っちゃねぇ☠ まあ、それだけ価値んあるシロモノなんやけ、それも良しっちしとくっちゃね☻」
などと、これまた偉そうな態度で舞台上を眺めている秀正自身も、ずっと以前、(チラッとだけど)孝治の裸を見た前科があった、もっともその場所は混浴風呂で、それもタオルで一番大事な二箇所(?)を孝治はちゃんと隠していたのだから、それほどの自慢にはならない出来事ではあるが。
ちなみに後ろ姿(背中からお尻まで)を、しっかりと鑑賞させ済み(?)。孝治もそこは承知のうえで。
「おれんこつよか、なして律子{りつこ}ちゃんば連れて来んかったとや? それに祭子{さいこ}ちゃんの顔かて、早よ見たいっち思いよったっちゃに☺」
自分の話にあまり触れてほしくない孝治は、とぼけた顔になって話題をすり替えた。これに秀正が、少々照れたような顔になって答えてくれた。
「いや、連れてこようっち思いよったっちゃけどぉ……産まれたての祭子ば、こげん朝早よう起こすわけにもいかんけねぇ♥ やけん律子にお守りば頼んで、おれだけで来たっちゅうわけたい♥ これもひとつの親バカやけね♡」
「嘘吐け♐」
秀正の言い訳を、孝治は即座に一蹴してやった。
「ほんとは律子ちゃんに、自分のスケベんとこば見せとうないの一心やろ☠ その分やったらそろそろまた、浮気ん虫が再発しようみたいやねぇ☻✌」
「ごっほん! いよいよ幕ば外すみたいっちゃぞ」
孝治のツッコミは聞かない振りをして、秀正が目線を再び舞台へと移し変えた。そこではちょうど中原が、絵にかけている幕を、まさに外そうとしているところだった。
会場の耳目すべてが、この一点に集中。秀正からシカトされた格好ではあったが、孝治もこれに瞳を向けないわけにはいかなかった。
「ごくり☭」
孝治は無意識的にツバを飲み込んだ。同時に中原の手で、幕がバァッと下ろされた。
「ああーーっ!」
湧き上がるどよめきと喚声。ただしこのどよめきと喚声は、すべて意表を突かれた事態を意味するものだった。なぜなら孝治自身も、おのれの瞳を疑っていたからだ。
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