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『剣遊記Z』

第六章 華麗なる美の戦士?

     (3)

「遅かばい! 腹かこうごつあろうが!」

 

 酒場で孝治たちを待っていた清美は、いつもながらの傍若無人ぶりでいた。

 

「孝治かて元男んくせばってん、ようこげな真似ができるばいねぇ☠ で、こん話ば、なしてあたいに回さんとかぁ♨」

 

「で、できりゃあ、そげんしたかった……っちゃけどねぇ……☁」

 

 これまたいつもどおり。思いやりのカケラも感じさせない、清美の嘲笑。孝治はこれに、苦笑でもって応じ返すしかできなかった。そんな清美のうしろでは、彼女の腰巾着でいじめられ役の徳力がすまなそうに、両手のシワとシワを合わせて、ペコペコと頭を下げていた。

 

 孝治は徳力をむしろ不憫に思うがゆえ、清美を本気で怒る気になれないのだ。だから怒れないついで、ひと言だけ声を掛けてやった。

 

「徳さんも相変わらず大変っちゃねぇ……それはそうとして、正男がおらんようちゃけど、どげんしたっちゃろっか?」

 

 盗賊の正男は、清美と徳力といっしょに宝探しの遠征から帰っているはずだった。しかしなぜか、この場に顔が見えていない。これにドワーフ{大地の妖精族}の戦士である徳力が、低い身長を無理に伸ばして、孝治にこっそりと耳打ちをしてくれた。

 

「はい……枝光さんは帰ってすぐ寝こんじゃったとですよ✄ なんせ清美さんとの同伴で、心身ともに疲れ果てちゃったようですけん……☹」

 

「なるほどっちゃねぇ……♋」

 

 孝治もごもっともと、コクリうなずきで返してやった。

 

 不死身(かどうかわからないが)のワーウルフ🐺{狼人間}をベッド送りにするとは。清美、まさに恐るべし!


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