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『剣遊記]』

第四章 炸裂! カモシカ拳!

     (2)

 今回の悪役、有混事が本拠地である岡山市内の教会を留守にして、ずっと津山市に潜伏していることは、桐都下の自供によって、すでに判明済みの話。

 

 宿敵を目の前にして、いよいよ相手の総本山に差しかかった孝治たち一行。だが近づくにつれ、山賊集団との熾烈な遭遇戦が、その激しさを一段と増していった。

 

「これで気づかんかったら、ほんまもんの大ボケ野郎やけ☠ 奴さん、おれたちが近づいてきたもんやけ、必死んなって刺客ば送って進路ば妨害しよんばい、きっと!」

 

「たぶん、そんとおりっちゃね☀」

 

 秀正の推測に、孝治も即答で同感した。そんな理由で、きょうはこれでもう三回目となる山賊集団との激闘が、現在も行なわれ中でいた。

 

 もともと真面目に働く生き方が大嫌いな連中であるし、だからと言って剣や武道の修行など、これまた真っ平御免の有様。そのような性格の集まりであるからして、大雑把な武器(錆びついた剣や手入れの悪い斧など)が頼りの山賊など、本格的に修練を積んだ荒生田や孝治たちの相手ではなかった。ところがそんな下っ端連中でも続けざまで攻めてこられると、これはこれで非常に厄介な集団と言えた。

 

「えーーい! 面倒臭かぁーーっ! いい加減オレに悪ば斬らせんねぇーーっ!」

 

 いい歳をして堪え性のない荒生田である。次から次へと襲いかかってくる山賊どもに音{ね}を上げ、片っ端から峰打ちで薙ぎ倒しながら、大声でわめき散らす事態へと発展。それはそれで器用な戦い方。孝治はそんな先輩を抑える不要な努力で、もう一生懸命の心境となっていた。

 

「やきー駄目ですっちゃよぉ! 確かに斬るんは簡単ちゃけど、流血沙汰んなったら必ず地元ん衛兵隊の介入ば招くことになりますけぇ!」

 

「ちっ! 心配性なやっちゃねぇ! なしてオレの後輩は、みんなこげん堅物っちゃろうかねぇ!」

 

 荒生田が孝治に応えて舌打ちをやらかした。それから自分の前に立ちはだかる、新たな巨漢の山賊と対峙したまま、荒生田は背後から飛びかかってきた山賊を簡単に後ろ蹴りで払って、見事な転倒を決めさせた。

 

 もちろん眼前の巨漢も、わずか五秒で片付けた。


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