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『剣遊記]』

第四章 炸裂! カモシカ拳!

     (1)

「ゆおおーーっしぃーーっ!」

 

「ぐげぼっ!」

 

 荒生田が打ち下ろした鞘ごとの中型剣が、斧で斬りかかった山賊の脳天を、ボクッと見事に一撃した。鞘が無ければその男は、頭のてっぺんから背中を通ってお尻に到るまで、恐らく真っ二つに両断をされたはずだった。

 

「安心せい♡ これは峰打ちっちゃけ♡」

 

 平然とそのように嘯{うそぶ}く黒サングラスの戦士――であるが、それを言うなら、ふつうは相手の両手両足だけにダメージを与えれば良いだけの話。人の最大の急所である脳味噌を狙い撃ちしておいて、そんな戯言{ざれごと}が通るはずもないだろう。

 

 しかし荒生田の場合は通るのだ。

 

「先輩……そいつばもう、話ば聞いてませんちゃよ✄」

 

 いっしょに山賊と戦っている孝治も、その点を指摘しないわけにはいかなかった。改めて見ればその山賊は、おでこに大きなたんこぶをこしらえ、口から泡を噴いて、すでに昏倒の世界の中にいた。

 

「これじゃほんなこつ、過失致死寸前の犯罪ですっちゃよ☂ やけん先輩は世間からバーサーカー{狂戦士}なんち言われたりするんですよねぇ☠」

 

「そうけ? バーサーカーかて、立派な誉め言葉っち思うっちゃけどねぇ☀」

 

 後輩である孝治からの嫌味など、相変わらずでちっとも動じようとはしない荒生田であった。


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