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『剣遊記14』

第二章 指宿温泉、怪夜行。

     (5)

 ここでまたも繰り返される、孝治の冒頭のセリフ。

 

「で、砂風呂っち、どげんして入るとやろっか?」

 

 軽装鎧も下の衣服も全部脱いだ孝治は、現在白いタオル(宿屋の備品)一枚で、一番肝心な部分(?)を隠しているだけの姿。マル秘の部分(?)はさすがに見せないとして、胸のほうは堂々と曝け出す格好でいた。

 

 今さら裕志相手に、なん恥じらう気にならんといけんとや――といった、一種の開き直り感情の賜物であろうか(??)。

 

「ぼ、ぼくかて……知らんちゃよ!」

 

 やはりと申すべきだろう。裕志は孝治に背中を向け、自分の貧相な背中とお尻を見せつけるような体勢になっていた。

 

「まあ、よかっちゃね☻」

 

 裕志をからかう遊びにも飽いていたので、孝治は右手でタオルを持ち、やはり下の部分を隠したまま、先行して砂風呂の場へと足を向けた。これにて今度は、孝治のお尻が裕志の前で丸出しの格好だが、まるで気にも留めなかった。

 

「うわわっ! 孝治っ! 見えちょうばい!」

 

「しゃーーしぃーーと☻」

 

 裕志の悲鳴など、それこそ意にも介さず。孝治は脱衣所から砂風呂に入る扉を、左手でガラッと開けた。

 

「ヤア、遅カッタンダナ」

 

「うわっち!」


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