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『剣遊記15』

第二章 開運! 美奈子の大当たり☆

     (4)

「あちゃ〜〜っ☠ やっぱ、あかんもんやなぁ

 

 結果は恒例と当たり前のごとし。千秋を始め美奈子も千夏も、見事轟沈{ハズレ}の有様だった。

 

「しょーがあらへん これも旅の土産{みやげ}話のひとつにはなりまんなぁ ええ教訓が得られましたわ

 

「う〜ん、千夏ちゃん、残念無念さんですうぅぅぅ

 

 もともとそれほど本気ではなかった気持ちが、この場での幸い。美奈子も千夏も、特に大きく落胆した気分にはならなかった。

 

「ほな、行きましょうえ

 

 とにかく、ハズレはハズレ。期待は叶わなかったものの、気持ちを新たに入れ替えて、美奈子たち一行は、この場から立ち去ろうとした。

 

「あっ、ちょっと! まだあたしの番号見てないとばってぇ〜〜ん✄」

 

「ああ、そうでんなぁ

 

 美奈子の秋恵に対する反応は、『ああ、忘れとりましたわ』程度のモノ。だけどそのような軽い扱われ方など、初めっから気にもしないようだ。秋恵は自分が買った富クジを右手で持ち、左手の人差し指を使って番号が隠れている部分を、ゴシゴシとこすってみた。

 

 でもって出てきた番号が、言われているとおりで十ケタの数字の羅列。

 

 『一二三四五六七八九十』だったりする。

 

「あたしって……なんか馬鹿にされとんのやろっか?」

 

 なんだか腑に落ちない気持ちになりつつ、秋恵はその番号を、掲示されている当選番号と照らし合わせてみた。

 

 次の瞬間、秋恵は脳内が真っ白となった。これを端から見れば、まるで死後硬直をして、弁慶の立ち往生となっているような感じ。

 

「秋恵ネーちゃん、どないしたんや?」

 

 さすがに様子を変と感じた千秋が、背中から声をかけてみた。

 

「…………☁」

 

「見せてみいや♐」

 

 それでも返事を戻さない秋恵に、こちらはこちらで業を煮やした感じ。千秋はひとつ年上であるはずの彼女の右手から、半分強引的に、さっと富クジの用紙を取り上げた。それから千秋も、掲示されている当選番号と用紙の番号を見比べてみた。

 

「こんなん簡単やで☻ どうせ当たるはずないんやから、気楽な気持ちで見たらええんや✌☻ え〜〜っと、番号は上から一、二ぃ、三、四ぃ、かいな☀

 

 もともと遠慮などとは無縁の性格である。千秋は番号の唱和も堂々としていた。ところがこのあとの双子の姉の反応も、秋恵と同一のパターンであった。

 

「それから五ぉ…………☁」

 

 千秋までもが口を大きくポッカリと開いて、この場にて直立不動――弁慶の立ち往生的姿勢となった。


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