『剣遊記15』 第二章 開運! 美奈子の大当たり☆ (21) 突然の声に振り返れば当然、そこには美奈子たち一行がいた。つまり美奈子に千秋に千夏に秋恵。しかもこの四人が四人とも、当たり前の展開ながら、孝治のオレンジ系ビキニ姿に注目してくれた。
「うわぁ☆ 孝治ちゃん、おっぱい大きいですうぅぅぅ♋☺☺」
「うわっち! 見らんといて⚠!」
千夏から胸の部分を思いっきりに覗き込まれ、孝治は慌てて両腕で隠した。
(それば言うたら、友美が嫉妬するっちゃけ♋☠)
とは口が裂けても絶対に言わないようにして。
でも周囲には関係なかった。
「ほんま、でっかいおっぱいやなぁ☠」
「うわっち! 友美だけやなかった☢」
千秋からも問題部分をつつかれ、孝治はつい口をすべらせた。
「わたしだけやなか……っち、どげんこと?」
「うわっち……あっ、いや、なんでんなか☁⚠」
けっきょく当の友美からも突っ込まれ、孝治はバツの悪い思いになって口を噤んだ。
それはそうとして(?)、孝治を注目している面々の中での筆頭は、やはり美奈子であった。
「こないして見てみれば、孝治はんもえろうかいらしいもんでんなぁ♡ その橙{だいだい}色した水着はん、ほんまのいっちょーらみたいなもんでっせ☀」
「ま、まあ……ベタ褒めしてくれるんはええっちゃけどねぇ⛑」
孝治は顔面から火が噴き出すような思いになりつつ、一応褒めてくれた美奈子に言葉を返してみた。
「美奈子さんは水着にならんとですか? 言い出しっぺのくせに見れば美奈子さんだけ、いつもの黒い格好なんやけど♐」
「そうっちゃねぇ☛ 正直言うて、太平洋の航海にいっちょも合わんような気が、わたしもするっちゃけどぉ☁」
孝治に続いて友美も指摘をするとおり、この場での美奈子は、思いっきりに浮いていた。なにしろ周りの面々――千秋と千夏は紺色のスクール水着。でもって秋恵は秋恵で、孝治と同じビキニスタイルながら、こちらはピンク一色の水着姿となっているのだから。
これでは孝治のビキニ姿など、ここではまったくの通常である。それなのに美奈子のみ、いつもの魔術師風黒衣姿でいるのだ。あるいはアラブの女性風とも言えたりして。
ここでなぜか、秋恵が教えてくれた。なんだか美奈子の代理のような役回りでもって。
「実は美奈子先生は、あとでとっておきの水着ば着るらしいですよ✌ それまであたしにも教えてくれん気ばってんねぇ☻」
「とっておきけぇ……♋」
孝治は初め、秋恵の言葉の意味するところがわからなかった。しかしそれがのちに判明したとき、孝治は大いにたまげる事態となる。
第一章で記述してあるとおりに。
その美奈子が自分の今の格好は棚に上げて、ますます孝治のビキニに興味を募らせている感じがありあり。
「ちょっと孝治はん、そのかいらしい水着について、ちぃっとばかし見せてくれはらしまへんやろっか? ちょっとかってくるだけでよろしゅうおま、なんやさかいに☺」
「うわっち? どゆこと?」
やはりここでも意味のわからない、美奈子の急な申し出だった。ところがその真意は、すぐに判明した。
「少々おかってさせてもらいまっせぇ☞」
「うわっち!」
美奈子が右手の指を、パチンと鳴らした。とたんに孝治のビキニのブラジャー――その胸のうしろの紐が自動的にほどけて、勝手に前へピュンと飛び出したのだ。
「うわっちぃーーっ!」
ビキニのブラジャーは宙をまっすぐ前に飛んで、それを美奈子が、右手でしっかりと受け止めた。これにて孝治はいきなりで、いわゆるトップレス状態となったわけ。
「うわっち! うわっち! 美奈子さん、それば早よ返しちゃってやぁ!」
孝治は大声で叫んだのだが、美奈子はまるで知らんぷり。孝治から魔術ではぎ取ったビキニの裏表を丹念に――さらにおもしろそうに両手で持って眺め回した。
「ほほう、なかなかのサイズでおまんのやなぁ☻」
「やっぱ孝治のっち、大きいっちゃねぇ♋♨」
案の定で友美からも突っ込まれた。少々の悪意を感じさせながらで。
このようなド派手極まる展開で、航海第一日目は無事(?)に暮れていったのである。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |