『剣遊記15』 第二章 開運! 美奈子の大当たり☆ (2) 海岸近くにある、けっこう広い脇の道。そろそろ次の宿場町も間近――かと思われる街道の途中であった。周囲に店もなにも無いのに多くの人たち(旅人や商人など)がたむろをして――いやもう、黒山の人だかりのような感じで集まっていた。
しかも多くの者が道端で腰をかがめて、なにやら熱心に、一枚の紙のような物を見つめていた。
その紙をゴシゴシと、右手もしくは左手を使って、表面をこすりながらで。
「おやまあ、なんでっしゃろうなぁ?」
この異様かつ独特極まる雰囲気は、美奈子の興味を、大いに惹かせる成り行きだった。
「うわぁ♡ なんでしょう?☀ 千夏ちゃん、ちょっと見てきますさんですうぅぅぅ✌✌」
「あっ! 千夏、ちょい待ちいなぁ!」
姉の千秋が止めようとしても、後の祭り。ちっちゃな体で千夏がとことこと、黒山の人だかりのほうへと駆け出した。
「しゃああらへんなぁ⛑」
千秋は軽いため息を吐いた。それからチラリと、美奈子に顔を向けた。
「師匠、どないしたらええと思う?」
「そうどすなぁ⛑」
弟子から訊かれた美奈子も、その瞳はやはり興味しんしん丸出しで、キラキラと光り輝いていた。
「うちらもちょっと見て行きましょうえ☞」
けっきょく美奈子もその気になって、千夏のあとを早足で追った。
「なんか、いじくそ楽しみばいねぇ☺」
秋恵までがなんだか、胸ワクワク顔になっていた。
「ほんま、しゃああらへんなぁ☻」
こうなれば千秋も、もはや同類だった。トラの手綱を引っ張って、メンバーたちの最後尾をとことこと、あとを追うことにした。 (C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |