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『剣遊記15』

第二章 開運! 美奈子の大当たり☆

     (17)

「うわっち! 水晶球がしゃべったっちゃよ♋」

 

「それも広島弁ちゃよ

 

「ツッコむの、そこね!」

 

 孝治と友美そろって、ブリッジ内で高く飛び上がった(天井に頭をぶつけた☠)。

 

『きゃっ♡ ペアのジャンプは初めてっちゃよ☀』

 

 涼子もズレたところにツッコんでくれた。それはそうとして、しゃべる水晶球ともなれば、美奈子の興味をさらに増幅させるには、充分過ぎるシロモノであろう。

 

「これはまた、驚き桃の木山椒の木ってなもんでおますなぁ☻♋ 言葉を言いはる水晶やなんて、このうちかて正直ビックリってもんでっせ☆★☻」

 

 美奈子はさらに水晶球に顔を寄せ、切れ長の瞳で、しげしげとその光る表面を眺め回した。それからひと言、尋ねてみる。

 

「おまいさん、もしかしはって、この船の心臓部なんどすか?」

 

「ソウジャケエノォ」

 

 すぐに水晶球が、美奈子に答えた。まるで某『〇義なき』シリーズを思わせる広島弁であるが、決してその方面の人――というわけでもなさそうだ。

 

「ワシャア、御主人ノ命令ヲ受ケテ、客人ヲセヤァーナイヨウ安全快適ニ旅ガデキルヨウ術ヲカケラレトンノジャ。セワガタワンコトモアルカモシレンガ、マアヨロシク頼ムケンノォ」

 

「こちらこそ、よろしゅう頼んまっせ

 

 美奈子が水晶球に向け、丁寧なお辞儀で返した。これは彼女が、高度な魔術に敬意を表わしているからであろう。この魔術師の師匠のうしろでは、千秋と千夏と秋恵もまた、同じように頭を下げていた。それから水晶球が、全員向けで声を発した。

 

「マズハ客人ガミンナ乗ッタヨウジャケエ、早速出航ノ命令ヲ出シテクレンカノォ。客人ノ声ガナイト、ワシャア自分デ動クコトガイタシンジャ」

 

「なんとなくなんやけど、どっか偉そうな感じやねぇ☹」

 

 孝治は美奈子と水晶球には聞こえないよう、友美と涼子相手に、そっとつぶやいた。そんな三人の前で美奈子は、孝治よりもややすなおな態度を示し続けていた。

 

「は、はい! では早速どすが、出航をお願いいたしますえ

 

「ワカッタァ。出航シタゲルケノォ」

 

「うわっち! ほんなこつ船が動き出したっちゃあ♋」

 

 やはり口振りの偉そうな水晶球が、美奈子の言葉を承知したとたんだった。孝治もビックリの速攻ぶりで、大型帆船が音も立てずに、岸壁から自動で離れていった。

 

 つまりが本当に出航なのだ。


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