前のページへ     トップに戻る     次のページへ


『剣遊記15』

第二章 開運! 美奈子の大当たり☆

     (14)

 帆船は見事、巧みな操船で岸壁に接岸した。

 

 すぐに右舷から備え付けの階段がガラガラと下ろされ、招待客(孝治たち)が船内に招き入れられた。

 

 ところが――である。これらの操作を行なわなければならない乗員の姿が、ただのひとりも船上に見受けられないのだ。そこが孝治には、まさに不思議――としか言いようがなかった。

 

「とにかく……乗れっちゅうことやね おれが一番で行っちゃろうやないけ

 

 なんとなくの不気味さを感じつつ、孝治は階段を慎重な思いで、一歩一歩上がっていった。

 

「や、やっぱ……曲がりなりにもこんおれが、みんなの安全ば確かめんといけんけねぇ☻」

 

「そげん責任感ば強烈にせんでもええっち思うっちゃけどねぇ

 

 友美も二番目で、孝治のあとに続いてきた。でもって三番目が涼子。

 

『確かに今おるメンバーの中で、元付きでも男っちゅうのは、孝治だけやけねぇ♀♂ 気ぃ張る気持ちも、なんとのうわかるような気もするっちゃねぇ☀』

 

「ありがとっちゃね♥ おれん気持ちばようわかってくれてくさ♐♠」

 

 孝治は涼子のセリフに、一応の有り難味を感じた――が、このあとがいけなかった。

 

『でもあたしの考えやと、今回の冒険は完全に女だけのパラダイスばいね♡ やけんっちゅうて、そん中でハーレムば期待してもいかんちゃよ☻』

 

「しゃーーしぃったい!♨」

 

 もはや説明するまでもないが、確かに今回の冒険――もとい慰安旅行の参加者で♂なのは、たとえ中身だけでも孝治ひとりであるからして。

 

 そのようなつまらない理由で、孝治は涼子の締めのセリフに噛みついた。これを下から見ている美奈子たちからは、『孝治はん、なん怒ってはるんやろ?』の顔をされたけど。


前のページへ     トップに戻る     次のページへ


(C)2018 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved.

 

inserted by FC2 system