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『剣遊記15』

第二章 開運! 美奈子の大当たり☆

     (11)

「ひえ〜〜、やっと帰り着いたっちゃねぇ☀」

 

 近隣ではあるが、博多市までの連絡配達仕事――つまりパシリを終えた孝治、友美、ついでに涼子の三人は、全身埃まみれの格好。そのままで、未来亭の店内に足を踏み入れた(幽霊が埃まみれ――なんてことは有り得ないか)。

 

 同じ県内であり、地図上でもそんなに遠くないとは言え、やはり北九州と博多では、約五十キロほどの距離がある。それだけの道のりをほとんど徒歩で往復するのだから、自然の雨や風にたたられて、衣服(軽装鎧)が汚れまくる成り行きも、それはそれで仕方のないことだろう。

 

『ここんとこ、黄砂{こうさ}ってのかなぁ? とにかく道中砂ぼこりがひどかったっちゃねぇ☻ もっともあたしの体は、砂も風も素通りなんやけどね✌』

 

 前述のカッコ内のとおり、ひとりどのような過酷な自然環境にも負けない特権を持つ涼子のみが、ニヤけた顔をして、孝治と友美の惨状を眺め回していた。

 

 そのような状況であるからして、孝治と友美はとにかく、早めの入浴が恋しくてたまらなかった。

 

「自慢話はもういいけ、まずはまっすぐお風呂に直行っちゃね☞ こんときんために、由香たちが用意してくれとうっち思うっちゃけ☻」

 

「うん、そうしよ✈」

 

 未来亭の大浴場は、酒場からそれほど離れてはいなかった。従って、帰店報告などは後回しにして、孝治と友美はさっさと、店の裏手のほうへ回ろうとした。

 

 そこに災難が待ち構えていたわけ。


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