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『剣遊記15』

第二章 開運! 美奈子の大当たり☆

     (10)

「おやまあ?」

 

 この給仕係たちの電光石火的早業――もとい逃げっぷりには、さすがの美奈子も言葉を失った模様。

 

「なんとまぁ……欲の無いお人ばかりでおますなぁ

 

「それはそうとしてやなぁ……師匠、余ったチケット、これからほんま、どないしまんのや?」

 

 大問題――と言うほどでもないが、千秋が根本的な先の見通しを、美奈子に問い掛けた。

 

「そうでんなぁ……☁」

 

 美奈子もこれには、返答に詰まった感じ。確かにメンバーが少々足りない程度で、旅行自体が中止とはならないだろう。しかしここから先が、美奈子たち関西人の習性が、モロに出るところ。何事も頂いたモノを全面的に有効活用しなければ、それは損したのと同じ失敗感でしかないからだ。

 

 念のため、美奈子は京都出身。千秋と千夏は大阪生まれである。秋恵のみ長崎の生まれであるから、ここでは特に関係はなしか。

 

「どないしまんのやて言われましてもなぁ……定員きっちりに参加せえへんことには、なんか気がかなんなぁ……☁ ほんま、どないしましょっかいな?」

 

「ほんと、もったいないさんですうぅぅぅ☻☻」

 

 千夏も交えて美奈子たち四人、そろって深いため息を吐いた。それからとにかく、給仕の面々への誘いはあきらめ。厨房から店内の酒場へと足を向けた。だけど、昼を少し過ぎたばかりである時刻の酒場は、まだそれほど客が入っていなかった。そのような閑散とした状況なのだが、美奈子はすぐに気がついた。

 

 瞳の前に絶好のターゲットが現われたという、真に都合の良い話の展開に。


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