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『剣遊記\』

第四章 怒涛の海底探査行。

     (18)

 永二郎が着ている服(白いTシャツ)を脱いだ。それはまあ、当然の行ない。永二郎の場合、服のままで海に入れば変身の際の体の膨張で、着ている服がすべて破れ散る破目となるからだ。

 

 だからそのようなもったいない行為など、できるはずがない。

 

 また永二郎の隣りでは、桂も服(革鎧から下着まで)を脱いでいた。

 

 最初、永二郎は自分ひとりだけで、海底に潜るつもりだったという。なにが潜んでいるかわからない危険な深海に、桂までも同行をさせたくない気持ちだったのだろう。だけど、必死の思いの顔で同行を希望する桂に、永二郎は悩んでいた。

 

「あたしも行くぞなぁ! あたし人魚なんやけ、足手纏いなんかせられんでしょ!」

 

 これに孝治も桂の気持ちがややわかるような気がして、永二郎に同行を勧めてやった。

 

「連れてってあげるっちゃよ☺ ひとりで行くよか周囲に目が配れるんやけ、ずっと安全てなもんちゃねぇ⛑」

 

「……わかったさー☀ いっしょに行きそーれ⛴」

 

 渋々というより、むしろ嬉々とした感じで、永二郎は同行を承諾。ところが当初は、このふたり(桂と永二郎)だけで海底を探索するはずだった。それなのに美奈子が突然、海底探査に名乗りを上げたのだ。

 

「ちょいと待っておくんなはれ! このうちも同行しますさかいに✄」

 

 これには正直、全員が度肝を抜かれた。孝治は慌て気味になって、彼女の真意を問いただそうとした。

 

「ちょ、ちょっと待ってはこっちっちゃよ! どげんして美奈子さんまで海に潜るなんち言い出すっちゃね?」

 

 これに当の美奈子は、まるで何食わぬの顔付き。

 

「理由はもちろんおましますえ✌ このおふたりの海底での行動を、このうちが援護して差し上げますよってに⛽」

 

「大丈夫やで☆ 師匠は海ん中では魚に化けとうさかい、泳ぎの心配は無用っちゅうもんや✋☻」

 

 千秋までが調子を合わせて、美奈子をフォローした。これをそばで聞いていた友美は、孝治にそっとささやいた。

 

「魚に変身……はよかっちゃけどぉ、変身魔術ば使いよう間は、他の魔術は一切使えんとやけどねぇ☢ 美奈子さんかてそげんこつわかっとろうに、それやったら援護の意味なんてなかっちゃよ☠」

 

「そ、それも、そうっちゃねぇ……☃」

 

 孝治もふんふんとうなずいた。もっとも、そのような疑問を抱いた者は、同じ魔術師である友美だけのようだった。他の者たちは、そこまで深くは突っ込まなかった。


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