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『剣遊記\』

第四章 怒涛の海底探査行。

     (14)

 鬼ヶ島への接近を試みようとしている中型漁船の船影は、島の高台に建てられているニワカ造り(木材をロープで頑丈にくくり付けただけ)の櫓{やぐら}からも、よく見えていた。

 

 櫓の見張り台には、手作りの小型望遠鏡で周辺の海域を監視する役目を請けた下っ端の海賊がいた。

 

「おい! 怪しい小船が近づいとるっち、首領に報せてこいや! こらぁ! 寝とるんやないでぇ!」

 

 見張りの仕事は、あまりにも暇だった。なので完全に居眠りを決め込んでいた弟分の頭を、そいつの兄貴分(関西弁の男)が蹴り飛ばした。

 

「あ痛たぁっ!」

 

 弟分がすぐに飛び起きた。そいつに向かって、兄貴分が怒鳴り散らした。

 

「ボケッとすんなや! 連絡が遅れたら、わいが首領からドえろうカミナリ落とされるやないけぇ! ヘタすりゃ、首領がかわいいかわいいしとる『あいつ』のエサにされるんやでぇ!」

 

「へえ、へえ〜〜い……☹」

 

 寝ぼけ眼が覚めないまま、弟分が高台の麓にある、首領と仲間たちの隠れ家に向かってトロトロと走った。もちろん、威張ってばかりいる兄貴分への愚痴も、しっかりと忘れていなかった。

 

「ちぇっ! せっかく人がいい気持ちで寝てたってのにぃ……なにも足で蹴飛ばすことないよなぁ〜〜☠ 今度もしあいつがドジ踏んで格下げになってボクチンのほうが上になったら、絶対きょうの返ししてやるんだからぁ☠☢」


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