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『剣遊記\』

第四章 怒涛の海底探査行。

     (13)

「あれが小豆島じゃきに☞ でっかいじゃろ☺ 昔、ある学校の話の舞台になった島とかで、今でもけっこう有名じゃなぁ☕」

 

「ほんなこつ大きかねぇ〜〜☆」

 

 老漁夫が右手で指を差す先に、瀬戸内海では淡路島に次ぐ大きさの小豆島が浮かんでいた。

 

 活字離れで文学には縁の薄い孝治であるから、老漁夫の言う学校うんぬんの話については、実のところよくわからなかった。それでも冒険では過去に何度か、瀬戸内海を訪れた経験はあった。しかし島々に上陸を行なう機会も、実は今回が初めてなのだ。

 

 孝治は老漁夫に、改めて尋ねてみた。

 

「それでじいさん、海賊が根城にしちょう島って、どこにあるっちゃね?」

 

 老漁夫は操舵輪を両手で握り、まっすぐ前を見つめたままで答えた。

 

「根城の島げなねぇ……その島は鬼ヶ島って言うてやんねぇ✍」

 

「そげん言うたらじいさんと会う前、正男も鬼ヶ島っち言いよったちゃねぇ✊」

 

「それはわしがまんで(香川弁で『全部』)教えてやったきにのぉ✋」

 

 孝治の問いに答えながらで老漁夫が舵を取り、船首を北の方角に変えた。

 

「鬼ヶ島は小豆島のちょうど真北にあるきに✍ 小豆島と岡山県の真ん中あたりじゃな……おっと、噂をすれば見えてきおったきに♐」

 

「なんか話が早いっちゃねぇ♠ とにかく、あれがそうけ……☛」

 

 戦士として、常に抜群の視力を保持している、孝治の瞳であった。その両目に、小豆島の島影からかなり離れた位置に現われた、ふたつの奇怪な角のような形状をした岩山がそびえ立つ島の姿が見えてきた。

 

 無論、孝治以上に驚異的な視力を鍛えている帆柱にも(左右ともに2.5!)、同じ光景が写っているようだった。

 

「なるほど、まるで鬼ん顔みたいな不気味な島っちゃねぇ☻」


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