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『剣遊記番外編V』

第四章 邪教壊滅作戦。

     (2)

 ふたりの男は可奈の口をふさいでいたタオルを外し、猿ぐつわの戒めから、一応解放してくれた。

 

 だからと言って感謝の気持ちなど、抱くはずもなし。可奈は一気にまくし立てた。

 

「ちっとべぇ! なんで悪魔の儀式さ昼間っからやるんだにぃ! そんなこんもねえこと、あたし聞いたこんもねえずらけどぉ!」

 

「そんな決まりはねえ!」

 

 ところがふたりのうしろから、例のハゲ頭の筋骨白装束が、ドカドカと部屋に入ってきた。どうやらふたりのうしろに、初めっから控えていたようだ。それも可奈を前にして、少しも動じる様子はなし。明瞭な回答を返してくれた。

 

 このような態度を世間では、よけいなお世話と言っている。

 

「昼間だろうが夜中だろうが、ビホルダー様はいつでも、生け贄をお求めなんだよー!」

 

「あ、そ……☠」

 

 これでは日頃から気性の荒さでは定評のある可奈も、まともに反論する気力が失せる始末。

 

(なんていいからかん(長野弁で『いい加減』)な悪魔儀式ずらぁ……☁☂)

 

司祭様、今回生け贄は、どういったやり方するべえか?」

 

 続いてまたまた、新顔の登場。ハゲ頭のさらにうしろ。頭を金髪に染めている手下が、強健そうな体格に似合わない、けっこうご丁寧な言い方で尋ねていた。もっとも金髪よりも、そいつのセリフのほうが、可奈の大きな興味を惹いた。

 

「おんしが……こんハゲが司祭なわけぇ?」

 

 金髪の口からこの場にそぐわない単語が出たところで、可奈は瞳が丸くなる思いがした。元は山賊だったに違いない男が司祭とは、大した出世をしたものだ。

 

 しかし可奈の質問に、その心境を察したらしいハゲ頭は、ここで見事な開き直りを見せてくれた。

 

「そうじゃん、悪いかよぉ☠」

 

 司祭なる男は、ひと言で可奈に応じ返した。

 

 確かに悪魔崇拝なれど、これはこれで一応は、ひとつの宗教。神には神の、また悪魔には悪魔専門の司祭がいたとしても、まあこれもふつうの成り行きであろうか――とは言え、可奈はやっぱり納得がいかなかった。

 

「ほんにこれでええずらか?」


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