『剣遊記U』 第六章 城門の魔獣。 (14) 「まっ、とにかく……やれやれっちゃね☂☕」
額に流れる冷や汗😅をハンカチで拭きながら、孝治は逃げていくオーガーの背中を見つめ続けた。
「あいつ……あれで案外、実は小心者やったんかもしれんばい☠ 今まであんまし、自分よか強いモンと戦ったことがなかったんかも☠ 基本的に弱いモンいじめが好きなやつやけねぇ⚠」
「わたしもそげん風に思うっちゃね✄ 確かに人間にも、そげなんがおるもんやけねぇ♐ 立場が弱いモンにはとことん威張るくせして、その反対やったら徹底的に媚びまくりっちゅうのがね☠」
友美も孝治のつぶやきに、同意のうなずきを返してくれた。どちらかと言えば、孝治以上に辛辣な感じでもって。さらについでなのか、そのあとからもうひと言、おまけのように付け加えた。
「でもなんだか、可哀想っちゃねぇ☂ あげな大ケガまでさせてしもうて、完治すんのにいったいどんくらい時間がかかるっちゃろっか?」
「そうやねぇ……✍」
まるで気変わりみたいに怪物のことを心配しだした友美だが、孝治もそれを、頭から否定する気にはならなかった。
「オーガーに同情は禁物なんやけど、あれだけの大ケガばしたんやけ、当分は山のどっかで、静かにしとうやろうねぇ⛽ あんだけ大きく成長するまで、いったいどんだけの人ば喰ったことか……それば考えたら、倒せるときに倒しといたほうが、いっちゃんベストやったんかもそれんとやけどね✊」
そこまで言って、孝治は少々重めであるため息を吐いた。すると再び気変わりをしたらしい。友美があっさりと、前言を翻{ひるがえ}した。
「それもそうやねぇ♐ それやったらわたしも、火炎弾の加勢ばしても良かったんかもね✄」
まさしく女心と秋の空である。孝治は声には出さずにつぶやいた。
(かなり長い付き合いなんやけど、ときどき友美がわからんごとなるっちゃねぇ✑ まっ、そこが友美の魅力でもあるんやけどね☻☻)
そんな友美の右耳に、涼子もそっとささやいていた。
『友美ちゃんって優しいのかおっかないのか、けっこうやるときはやる、っち感じやねぇ♬ まあそれでも、たとえ相手が怪物であっても、少しは可哀想って気にもなれるんやねぇ♥』
これに友美は、それこそ少しだけのようだが、顔をぽっと赤くしていた。
「ま、まあね……オーガーかて、自分で望んで怪物に生まれたわけやないとやけ♧」
『そうっちゃねぇ……あれ?』
このとき涼子が、なにかに気づいたらしかった。その点なのかどうか、友美に再度、問い直した。
『……確か、やけど霧島で孝治がウォーム{妖虫}ば退治したとき、友美ちゃんはもう心の底から大喜びっち感じやったっちゃね✍ 今のオーガーと比べて、あれはあれで良かったと?』
「うわっち、それはもっともやね✋」
孝治も涼子の疑問に同意した。しかし友美は涼子の問いに、実に明快な態度を見せつけた。
「ウォームは気持ち悪いけ、あれで良かったと✌⚠」
『そ、そうけ……☁』
幽霊のくせして、涼子が瞳を真ん丸にした。このあと今度は、孝治の右耳に、そっとささやいてきた。
『友美ちゃんも、けっこうわからん性格しとるっちゃねぇ⛑ あれじゃ丸っきりの差別ばい☠ 孝治もそこんとこ知っっとったと?」
「そうやねぇ☕」
孝治はなんとなく、ぷっと吹き出したい気持ちになった。それはたった今、自分が考えていたことと、まったく同じ思いであるからだ。
とにかく孝治は、涼子に答えてやった。
「おれから見たら、友美との仲は毎日が新発見の連続っちゃね✌ まっ、逆に友美から見ても、おれとの付き合いは新発見の連続っち思うとやけどね✍」
これには涼子も、すぐに納得をしてくれた感じ。
『あっ、それはよくわかる気がするっちゃねぇ♡ あたしもおんなじ毎日なんやけ☀』 (C)2011 Tetsuo Matsumoto, All Rights Reserved. |