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『剣遊記 番外編Y』

第五章 人生楽ありゃ苦もあるさ。

     (7)

 そんな未来亭の店長を、執務室にひとり残してだった。

 

「すぉれでは黒崎クン、またお会いしようではぬぁいかねぇ☆ このうわたくしもこの魔術が支配しとう世界とやらが、大変気に入っておるからにぃ♡ それに本来このうわたくしは、このような目立たないシチュエーションで初登場するようなキャラクターではぬわいんだがや☞☞ 次回再登場でおいでするときは、もっとおどけるほどちゃんちゃんに、華々しいデビューを飾るつもりであるからしてだがにぃ、黒崎クンも期待がはぜる(名古屋弁で『破裂する』)ほど待っておくれでおりたまえよ☻ ぬわーーっはっはっはっはっはっ☆☀☠」

 

「店長、ボクモマタ、ココニ来ルンダナ。律子サント……ソレカラ秋恵サンニモヨロシク言ッテオイテホシインダナ。オフタリトハイロイロアッタバッテン、人生楽アリャ苦モアルサッテ、ボクガ言ッテタト伝エテホシインダナ、ソゲンコツハナカトデスタイ。デハ、あでぃおす・あみーごナンダナ」

 

 日明と徹哉。このふたりの思いっきりなC調に当てられ、黒崎も見事な苦笑気分と顔になる。

 

「……わかった。いまいち意味がよくわからないんだけど、とにかく伝えておくよ」

 

 これにて再会の約束を交わしてから、日明と徹哉のふたりが壁の向こうにある、奇怪な機械仕掛けの部屋に、今度こそそろって足を踏み入れた。すると壁が独りでにガァーーッと閉まり、あとはふつうによくある、ただの部屋の一面となっていた。

 

「……まあ、目立ちたがり屋の博士と徹哉君のことだがね」

 

 ひとりでポツンと残された格好ではあった。しかし黒崎の顔は、先ほどよりもさらに余裕の笑みで満ちていた。

 

「今回、出番が少なくて不満なのは仕方がないことだろうけど、博士がこの異色な世界を気に入ったと言うのは、たぶん本心からの言葉だろうなぁ。だけど次にまた来られたときには、あまり騒動を起こさないでほしいものなんだがね」

 

 ついでだけど黒崎は、今になって床に落ちているふたつの物に気がついたりする。

 

「ん? なんだがや……って、徹哉君の右手が落ちとるがね……それと日明君のメガネもがや。おーい、忘れモンだがねぇ……って言っても遅いか」


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