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『剣遊記X』

第二章 許嫁と玉の輿。

     (5)

 美奈子と千秋と千夏。三人が夕食のために三階から下りてきた時刻は、そんな最中だった。

 

「美奈子ちゃぁん♡ あそこにぃ皆さん、たくさんたくさん集まってますですよぉ☞ いったいなんなんでしょうねぇ?」

 

「ほんまどすなぁ♐ なにがあってはるんやろ?」

 

「なんや仰山集まっとんなぁ?」

 

 最初に気づいた者は千夏で、美奈子と千秋も、すぐに注目した。

 

 一階に下りる階段からは、給仕係たちの人垣だけが見えていた。従ってこの時点において、バードマンである静香の姿は、三人の視界から隠れていた。その代わりでもないが、別の所で孝治と同じテーブルに着いている、なぜか大き過ぎる男の姿が、三人の瞳に写った。

 

「うっわああああああっ! なんやあ! 師匠、見てえな☞ ネーちゃんの隣りにすっごいガタいのデカいおっさんがおるでぇ!」

 

「まあっ! ほんまやこと!」

 

 今度は千秋から教えられ、さすがの美奈子も大男(魚町)の並み外れた巨体に、思わず度肝を抜かれたご様子。

 

 隣りで小さく見えている戦士は、孝治に違いないようだった。それがこうしていっしょに並んでいる姿を眺めれば、そのあまりの体格差。まるで自分自身の瞳がおかしくなったような錯覚を、美奈子は衝撃的に受けていた。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと、孝治はんのお知り合いのようでおますさかい、見に行ってみましょうえ☺」

 

「はいですうぅぅぅ♡」

 

「はいな、師匠!」

 

 これでけっこう好奇心が旺盛な三人組。美奈子とふたりの弟子――千夏と千秋が、すぐに階段を駆け下りた。


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