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『剣遊記超現代編T』

第四章 美女(?)漫画家のいちばん長い日。

     (9)

「どうしたんだろ、お姉ちゃんたちと友美さん、突然静かになっちゃって……って、理由はだいたいわかるんやけどね☻」

 

 なぜだか急に押し黙った元孝治たち四人と友美を見て、涼子は湯船の端のほうでひとりふふんと、なにかを見抜いたような気持ちになっていた。

 

 幼少のころから、けっこう勘の鋭さを自認していた涼子であった。それが今回も、大いに才能を発揮したという感じ。

 

「実は前から思っとったっちゃねぇ〜〜☻ 友美さんが家に来るとお姉ちゃんたち……そんときはひとりのお兄ちゃんやったけど、ヤケに上機嫌になって過剰気味に挨拶したり、お茶っとかジュースば出したりしよったもんね♪ 友美さんのほうも満更でもない顔ばしとったけ、もしかしていつかは……っち思いよったんやけど、今のあげな状況で、これからどげな風にふたり……やない五人は進展するとやろっか? これって人類史上初めての、大きな未曾有な出来事ばい✍✍」

 

 まさに涼子がはた目で見ているとおり、元孝治たち四人は完全に同一の人物であり、以前はひとりの健全な男性そのものであった。それが女性に謎の性転換をしたばかりではなく(これだけでも世界史上類を見ない大事件だが)、さらに四分裂という、誰も想像ができない混沌{カオス}状態となったのだ。

 

 これこそ人類史上始まって以来の、壮大な実験とは言えないだろうか。


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