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『剣遊記超現代編T』

第四章 美女(?)漫画家のいちばん長い日。

     (10)

 同時刻。女湯の入り口前では、和布刈と井堀のふたりがなぜか、コンビニ前のヤンキーのようにして、う○こ座りをしていた。

 

こんなふたりの目的は、『これ』である。

 

「先輩、やっぱヤバいっすよぉ☠ 先生たちのヌードを、こっそり覗くだなんてぇ

 

 かなり弱気気味である井堀に対し、和布刈のほうは断然に、やる気満々となっていた。

 

「あに馬鹿なこと言ってんだよ☻ おまえだって漫画描いてるとき、いつも先生たちの豊満な胸ばっかり、背景描くのをそっちのけにして、涎ばっかり垂らしてるだろ☛ だから存分に堪能できるうちに堪能しとけば、もう仕事中にムラムラしないで、先生の連載もこれではかどるってもんなんだよ✌ だからこれはおれたちの欲望を満足させるためじゃなく、少年ビクトリー愛読者五百万人のためでもあるんだよ✋✋

 

「その理屈……滅茶苦茶過ぎって気がしますけどぉ……♋」

 

 井堀が疑問に感じる気持ちは当然であろう。だが思わぬ方向から、和布刈への賛同者が現われたりする。

 

「ゆおーーっしっ! そのとおりっ! すべては未来出版の業績を上げるための、必要なプロセスなんだな、これが✌☻」

 

「あ、あれ?」

 

「ひょっとして、荒生田さん?」

 

「正解っ!✌」

 

 和布刈と井堀が突然轟いた声に振り向けば、そこには恒例のサングラス顔がニヤついていた。ついでにおまけで、牧山も付き従えて。

 

 無論和布刈と井堀は、そろっての疑問満載となった。

 

「ど、どうして……ここは女湯の入り口なんですけど?」

 

 こいつにその質問を尋ねる資格はまったくないのだが、とりあえず和布刈は訊いてみた。

 

 これに速攻で、荒生田が答えた。こいつにも資格がないだろうけど。

 

「簡単なことだ✄ きょうの水着撮影で疲れている鞘ヶ谷先生たちを慰問するためだよ☻ 先生たちにはあしたも頑張ってもらわないといけないから、なにか差し入れの御用聞きってとこかな☻✌」

 

「それって……先生たちが入浴中にすることじゃないって、ぼくは言ったんだけどなぁ♋☠」

 

 うしろでこそっと、牧山がつぶやいた。井堀も。反対にそのとおり――だと、和布刈はうなずいた。しかしこれらの疑問や賛同などは、荒生田本人にはまったくもって関係なかった。

 

「で、先生たちは今、この浴場の中にいるわけだな☞♐ それじゃ牧山、先生たちが今なにがほしいのか、さっそく訊いてくるとしようかね☻☻☻」

 

「それってなおさら、覗きの言い訳、そのまんまじゃん☠」

 

 繰り返すが、ここまで来ていて人の事は言えないはず。それでも井堀は、荒生田に根本的な疑問をぶつけてみた。されど荒生田の顔に動揺の色など、やはりまるで無し。

 

「いいから、いいから☻ 写真集の担当ってのは、モデルのためならなんでもやらないといけないんだよ これも仕事の内ってこと♥♥♥

 

「こ、これでいいのかなぁ???」

 

 井堀の左横にいる先輩の和布刈が、さすがに頭の上に三個の『?』マークを浮かべていた。


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